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「自分は“悲劇のヒロイン”だと思っていましたよ」撮影中に女性の肛門を破壊…AV業界史上最悪の“バッキー事件”を犯した男性が明かした、周囲に対する“本音”

『同人AV女優 貧困女子とアダルト格差』より #2

2023/06/20

genre : ライフ, 社会

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かつての仲間たちからの拒絶

 2021年2月、千葉刑務所を満期出所した。2005年7月、26歳のときに逮捕、勾留されてから、足掛け17年もの月日が経っていた。年齢は43歳になっていた。

「囚人たちは出所したら『甘い物を食べる』とか言うけど、そういう食欲は一切なかった。外に出て自由になって、さて、どうするかってなった。最初はどこかに拠点つくって事業をやろうって。それと家族を立て直そうって思っていた。逮捕されたとき0歳だった子どもは高校生になっているはずだって。出所のときに渡された金は12万円ちょっと。そのくらいしかなかったけど、金は働けば何とかなる。何の心配もしてなかった」

 朝、手続きをして塀の外に出た。大きな壁、門が開かれた。そこには誰もいなかった。千葉刑務所の最寄り駅は東千葉である。街を眺めながら駅までゆっくり歩いて、総武線に乗って東京に戻った。電車内ではみんながみんなスマホをいじっていた。2000年代にはなかった風景だった。

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誰も会おうとは言ってこない

 刑務所にずっと本を送ってくれた後輩を頼って、西武新宿線沿線の仮住まいのアパートに行く。後輩からスマホをプレゼントされた。タッチパネルを初めて触ったが、使い方はすぐに覚えた。夕方、昔の友達や仕事仲間に出所の報告をしようと電話をした。

「誰も俺と会いたがらない。何も求められない。単純に出所したから報告で連絡をしたわけ。電話口の雰囲気で分かるじゃないですか。少なくとも全員17年ぶり。テンションが低い。俺も無理に会いたいとも思わないし、あーそうなんだって。本当に仲がよかった何人かに連絡したけど、そんな感じだった。残念でしかない。本当にそうですよ、残念。そういう態度をとられて怒ってないし、何とも思ってないですよ。でも、残念」

 出所したら、また仲間を集めて事業をやろうと思っていたが、みんな様子がおかしかった。出所祝いどころか、誰も会おうとは言ってこなかった。

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