上田 不動産需要の小さい地方の場合、空き家を売ったり貸したりするのは簡単ではないんですが、それでも比較的に活用しやすい空き家もあります。なかでも一番可能性が高いのは、買った人が自分で手を入れることなく、すぐに住める「即利用可」の空き家です。これは市場性があります。
松本さんのご実家は、宮大工さんの建てた家だけに造りがしっかりしていましたし、長期間にわたって管理もきちんとされていた。そして何より600万円もかけて水回りなどのリフォームをされていたことで、買われた方はそのまますぐに入居して生活を始めることができた。これが決め手になったのだと思います。
田舎へ行くほど、空き家の価値は「建物のよさ」にかかってくる
松本 もともとは東日本大震災のあと、いざとなったら自分が家族で住めるようにと考えて水回りを直したり、エアコンをつけたり、壁を直したり、とリフォームしたんですけど、結果的にはそのおかげですぐに買ってくれる方が現われたわけですね。
上田 そうだと思います。地方の売り物が多い地域では建物が使えるかどうか、という点がとても大事なのです。田舎へ行くほど土地の価値はゼロに近づいていくので、空き家の価値は建物のよさにかかってきます。すぐに住めるいい物件なら、どんな田舎でも流通する可能性はあります。
ただ、どんなに元がいい建物でも何年も放っておけば、すぐに傷んで人が住めなくなってしまいます。「住めるようにするには購入後のリフォームに何百万円もかかる」と言われたら、誰だって二の足を踏みますよね。各地の空き家バンクに登録された物件を見ても、買い手や借り手がついて流通するのは、すぐに住める状態の物件が圧倒的に多いです。「何百万円もリフォームにかかりますよ」という空き家は、まず流通しません。
松本 そうすると田舎のほうに空き家をお持ちの方は、まず建物をよくしないといけないし、そのためにはある程度お金をかけざるを得ないということですよね。
上田 ただし空き家の多くは、築30年以上の物件ですから、リフォームするかどうか、どこまでリフォームにお金をかけるかは、よく考えたほうがいいと思います。300万円かけてリフォームしても100万円でしか売れないかもしれないからです。お金をかければ流通はしますが、希望する値段で売れるかどうかはまた別問題です。
一方で売れずに所有し続ければ、税金や管理コストがかかり続けます。リフォームについては、売れずに所有し続けた場合の維持費の負担も考えて、トータルで判断する必要があります。