“お客様”のその後
残念ながら、カスハラ加害者の身勝手さは、社会的制裁を受けても直らないケースもある。
2014年9月、兵庫県加古川市の50代男性職員が、コンビニの女性従業員にセクハラ行為をおこない、停職6カ月の処分を市から受けた。ところが、男性職員は、この懲戒処分は重過ぎると不服を申し立て、市を訴えたのだ。訴訟の上告審判決で、裁判長は懲戒処分は「著しく妥当を欠くものであるとまではいえない」として男性職員側の請求を退けた。カスハラ加害者が、自身の加害行為を正当化する一方で自分の不利益には過敏であることを物語る事例だ[弁護士ドットコムニュース 2019年2月14日]。
なかには、殺人事件に至ってしまったカスハラもある。
2004年、東京都墨田区で30代の会社員男性が刺殺される事件が起きた。逮捕されたのは当時20代の牛丼店の店長だ。被害者の会社員男性は以前からたびたび店でクレームをつけ、店長との間でトラブルが続いていた。男性に現金を支払っても納得してもらえず、業務に支障が出ると考えて店長は殺人を犯してしまったのだ[毎日新聞 2004年12月12日]。
クレームに対する謝罪と対応があってもなお、キレる“お客様”が矛を収めないケースは多い。こうした終わりの見えない理不尽さを、現場の人員だけで解決することがいかに容易でないか、数々の事件は示している。(#1を読む)
【出典】
・「週刊現代」 2013年10月26日号「『しまむら』店員を土下座させて逮捕 クレーマー主婦をブタ箱に入れた『強要罪』はこんなに怖い」
・産経ニュース 2014年12月24日「『誠意ってお金のことですわ』コンビニ土下座事件…モンスタークレーマーが法廷で言い放った信じがたき“常識” ついに裁判官もキレた!?」
・J -CASTニュース 2014年12月30日「コンビニ店員に『土下座強要』、今度は北海道で 男女4人逮捕」
・産経ニュース 2015年5月9日「『くそおもろい笑』で炎上、ボウリング場で『土下座強要』させた学習能力ゼロの男女3人組」
・産経ニュース 2015年6月9日「クレーム謝罪、土下座しても店員の頭蹴る…傷害容疑で男逮捕 滋賀県警」
・弁護士ドットコムニュース 2019年2月14日「コンビニ店員にセクハラ、笑顔対応は『同意』じゃない 市職員が逆転敗訴」
・毎日新聞 2004年12月12日「東京・向島の刺殺:牛丼店長『クレームしつこく殺した』会社員殺害容疑で逮捕」