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 平成29年、我が国は17年間批准できなかった『国際組織犯罪防止条約』を批准した。報道等では「共謀罪」に注目が集まったが、同条約には証人及びその親族等の保護、被害者の保護等の規定がある。

 是非、この証人保護プログラムについても、前向きに議論を進めていただきたい。

工藤會ナンバー2の田上会長から年間2000万円以上の支出を確認

(3)マフィア財産の没収

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 イタリアではマフィアメンバーの財産が明らかになった場合、その財産について、マフィア側がその入手先を立証しなければならない。マフィア側が正当所得と立証できなければ、その財産は没収される。

 日本でも、暴力団等に関し国税側へ税務調査を促す「課税通報」を行っている。しかし、それはあくまで通報にすぎない。実際には、多額の現金や預貯金を発見しても、それがいつどのような状況で得た所得なのか立証できないことが多い。

 工藤會関係企業の取締りでは、相手が企業だったため、国税当局は数億円を徴収している。暴力団は法人格のない任意団体だが、今回の野村総裁の脱税事件では、口座の管理状況や、一部の所得について関係者からの証言が得られたため、脱税を立証できた。また、野村総裁の預貯金等も事前に押さえることができた。

 工藤會ナンバー2の田上会長も、私が担当していた当時、年間2000万円以上の支出が確認できた。しかも確定申告していた。

 今回の公判で、検察側が、多額の確定申告をしていたことを取り上げ、田上会長の収入について追及した。だが田上会長は「言いたくありません」と答え、それで終わっている。工藤會・野村総裁は脱税で検挙され、一審は有罪を宣告している。

損害賠償請求訴訟も有効な武器だが…

 だが、他の暴力団のトップについてそれが可能だろうか。

 暴力団対策法は幾度か改正されてきた。指定暴力団員による指定暴力団の威力を利用した威力利用資金獲得活動については、指定暴力団の代表者が損害賠償の責任を負う。

 令和5年3月、工藤會組員による特殊詐欺の被害者4人が、野村総裁らを相手取り、横浜地裁に約1373万円の損害賠償請求訴訟を提起した。そして福岡県警は工藤會側に対し、請求を妨害する行為を行わないよう仮命令を出した。

 この損害賠償請求訴訟も暴力団の資金に対し有効な武器ではあるが、被害者側が訴訟を提起しなければならない。

 自ら手を汚す必要のない指定暴力団のトップだけでも、財産の入手先の正当性の立証責任を課し、立証できなければ没収することとすれば、大きな打撃を与えることができるだろう。