そんな家で生まれた彼女は、物心ついた頃から様々な習い事をさせられていた。小学校に入る前から、英語、フランス語、スペイン語を習わされていたというからよほどだったにちがいない。小学校に上がってからは、学校の成績や塾のテストが返ってくるたびに、家族会議が開かれていたそうだ。
不運だったのは、少女は生まれつきIQが低く知的障害とのボーダーにあり、学力を上げることが難しかったことだ。それゆえ、周りからかけられる一言一句がプレッシャーとなって彼女を苦しめた。
彼女ができるのは、家から逃れることだけだった
少女は次のように語っていた。
「あの人(母親)の言葉は全部、勉強して偉くなれと言っているように聞こえた。『宿題やったの?』『誰とどこへ行くの?』『ご飯を早く食べなさい』といった言葉も、『そんなんで偉くなれるの?』って言葉と同じ。だから、1日に何十回も怒られている感じがしてた。
兄は頭が良かったんで親の期待通りに生きていた。でも、うちはバカだから、いくら勉強しても成績は悪かった。中学、高校と進んでいくうちに、親の言葉がどんどんきつく感じて、最後は同じ家に暮らしていることも苦しくなった。それで家出をしたの」
もし母親の勝手な思い込みだけなら、子供は祖父母に理解を求めたり、きょうだいと愚痴を言い合ったりできたかもしれない。しかし、周りにいる人たち全員が同じ価値観を持っていれば、その子の心は休まる暇がない。
そんな彼女ができるのは、家から逃れることだけだった。それが家出、そして非行へとつながっていったのだ。ちなみに、彼女のIQが低いことがわかったのは、少年院に入ってからだった。(続きを読む)
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