オーシャンビューの露天風呂に浸かりながら釣りができて、さらに釣った魚をプロの料理人が調理までしてくれるとしたら……。まるで釣り人の夢を全部詰め込んだような素敵な客室に泊まれる旅館が能登半島にある。

 海水温も上昇して魚の活性もベストシーズンを迎える初夏、旅行と釣り欲を同時に満たすべく車で能登半島へ向かった。今回は石川県七尾市に位置する和倉温泉「多田屋」で過ごした3日間の“釣り温泉旅”をレポートしていく。

和倉温泉 多田屋で2泊3日の釣り旅

 全国有数の高級温泉街とも知られる和倉温泉。

ADVERTISEMENT

和倉温泉 総湯

 開湯1200年とされる歴史ある温泉だ。

 温泉街から少し離れ海岸線沿いを進むと今回宿泊する多田屋がある。明治18年創業の老舗で一部の客室を除き、湖のような穏やかな七尾湾を一望できることでも有名だ。

多田屋

 高級旅館に泊まるとは思えないほどの釣具を車に積んで、千葉県から中央自動車道経由で石川県七尾市へと車を走らせた。

 到着するとすぐさまスタッフの方が荷物を運んでくれたのだが、釣具の多さが異常ではないか恐る恐る訪ねてみる。すると、「多田屋では珍しくはないですよ」と返答をいただいた。大きなロッドケースを運ぶお客様もいるそうで、遠慮なく釣り三昧できそうだ。

 入館してすぐエントランスからロビーに繋がる廊下は一面ガラス張りになっており、横長に切り取られた情緒的な景色が一気に和倉の世界に引き込んでくれる。

ロビーに続く廊下

 釣りができる客室に宿泊されていない方でも、プライベート桟橋から釣りができる!

誰でも利用可能だが、夜の利用や人がいる時の投げ釣りはお控えくださいとのこと

 今回私が宿泊する「貴賓室 利久」と言われるお部屋は、多田屋でもっとも贅沢な造りになっており、12部屋あるうちの6部屋が露天風呂付きで、さらに部屋から釣りができる仕様だ。入室すると15畳の広々とした和室がある。開放的で旅の疲れを癒すには十分すぎる空間だ。

和室

 奥へ進むと和室とは一風変った板の間に繋がる。大正ロマンを基調とした家具やフローリングで設えており、無の部屋とも言われる。ソファーに座って外を眺めているだけで心が浄化され無心の境地に触れられる気がした。

板の間

露天風呂と釣りが同時に楽しめる天国のような空間

 さらに外へ出ると、すぐさま縁側と一体になったお風呂が目に入る。

お部屋によって露天風呂の様式が異なる

 シャワーも水道もないシンプルにして大胆な木造の露天風呂。お庭を挟んだ先はただ七尾湾が広がるだけの圧倒的開放感。湯船の温度は40℃くらいだろうか、長風呂にも適しており入浴が楽しみでしかたない!

大浴場にある飲用を口に含むと塩辛くて苦味があった

 そして今回の最大の目的でもある釣りができるお庭も広々としており、3m未満のコンパクトロッドであれば振りかぶって投げることもできそうだ。

レンタルタックルもあるので手ぶらでOK

 垣根にロッドを立てかけて湯船でアタリを待つこともできるだろう。想像を膨らませながらまずは釣りの支度をした。