「都市部を流れる河川に2m近くもある巨大な魚がいる」

『釣りキチ三平』の怪魚回を彷彿させる、ファンタジーとリアリティの狭間を回遊するかのような巨大魚が関東を流れる利根川に実在する。その正体とは中国四大家魚の一角、アオウオだ。

アオウオ釣りの聖地とされる利根川

 個体の希少性、規格外の体格から織りなす圧倒的パワー、そして長時間に及ぶ野営での釣行スタイルが多くの釣り人を魅了している。「イシダイやGT(大型のロウニンアジ)など海の大物釣りを一通り経験してアオウオ釣りに着地した」という人もいるほど、釣り人のロマンを駆り立てるアオウオの魅力とは一体何なのか。

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 今回は、「幻の巨大魚」と称される日本最大級の淡水魚アオウオを追った足かけ3年の釣行をレポートしていく。

長寿であるコイ科の魚は賢く警戒心も高い

 中国四大家魚とは、中国から食用として日本に移殖されたコイ科の魚、ハクレン、ソウギョ、アオウオ、コクレンの総称(アオウオやコクレンは、その他の種苗に混じって移入したとされる)。特にアオウオは最大で2m近くまで成長し、国内でも170cmを越える個体が記録に残っている。中国では四大家魚を池に放流すると、それぞれ食性が違うため餌を取り合うことなく成長する養魚方法が確立されている。

 私が中国四大家魚を知ったのは2016年で、4種すべて釣ろうと目標に掲げてから、これまでにハクレンとソウギョを釣り上げた。ハクレンは植物性プランクトンを主食とするため、釣り餌に加工されたジャガイモを好み、またソウギョは字のごとく草食魚のため川岸に生えた草を放り込んで釣ることができた。

2020年に釣ったソウギョ

 長寿であるコイ科の魚は賢く警戒心も高いため、比較的数が多いとされるソウギョでも釣り上げるまでに3年かかった。さらに個体数の少ないアオウオは、長期戦を覚悟して挑むことになる。

釣り場探しからスタート

 2021年春、アオウオ調査のための釣り場には、日本一の流域面積を誇る利根川を選定した。