世界中の怪魚を釣りまわり、その様子をYouTubeで配信する女性アングラー・マルコス氏。「見たこともないような珍しい魚を釣るのは文句なしに楽しい」と語る彼女は、日々どのような怪魚と対峙しているのだろう。

 ここでは、マルコス氏の生い立ちから会社員時代、はじめての釣り、世界を釣るようになるまでをまとめた冒険譚エッセイ『世界を釣る女』(KADOKAWA)の一部を抜粋。怪魚・オオカミウオを釣り上げた際のエピソードを紹介する。(全2回の1回目/後編を読む

 

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バス釣りの奥深さ

 何に対しても飽きっぽい私なのに、釣りに関してはまったく飽きることがない。

 むしろ「もっとやりたい」という心境なのだから、いつも不思議に思う。

 それにしても、なぜ飽きないのだろうか? 自分なりに考えてみた。

 第一に思い浮かぶのは、釣りによって「モノを獲る」という人間の本能的な部分を刺激されるからではないかということ。魚が針に掛かった瞬間、私はいつも何とも言えない興奮を覚える。釣りは、私の体に潜んでいた本能的な部分を呼び覚ましてくれたのだと思う。私としては単に本能に従っているだけなので、いつまで経っても飽きないのだろう。

 数ある釣りのなかでも、入り口となったバス釣りにはいまだに特別な思い入れがある。それほどまでにバス釣りは魅力的で、しかも奥が深いのだ。

 

 同じバス釣りでも、釣り場によって釣り方やルアーの種類が変わるため、その都度、その場所に合った釣り方を考える必要がある。それを怠れば、いつまで経ってもバスを釣ることはできない。

 ルアーの種類は、水の濁り具合やその日の天気、時間帯、温度や風向き、魚が食べているものや、魚の擦れ具合によっても変わってくるため、それぞれの釣り場によって大きく異なる。特に、釣り人が多い釣り場のバスは、生存本能を働かせて学習を重ねていくので、そうなるとバスとの知恵比べを強いられることもある。

 私の住んでいる周辺には、同じ地域にある野池なのに、めちゃくちゃ釣れる場所とそうでない場所がある。釣る側に、「どうしてなんだろう?」と思わせるところもバス釣りの魅力だ。

 バスプロと言われる人でも、1尾を釣り上げるのに頭を悩ませている姿を見かける。常日頃から研究を重ねていても、思うようにいかないのがバス釣りなのだ。