斬新なエサで釣りをしてみたいと考えている人がいたら、ぜひ“熟成スルメイカ”を試してみることをお勧めする。
冬場だと腐敗がなかなか進まないので“熟成”させるのは難しいかもしれない。その場合は、ファスナー付きの食品保存袋でしっかりと密閉し、冷蔵庫から取り出したスルメイカをこたつに入れ、さらに冷蔵庫に戻し、再びこたつに入れるという作業を繰り返すといいだろう。
ただし、くれぐれも家のなかで保存袋を開けないで。それだけはお伝えしておく。
コイは甘いものに目がない!?
魚は人間が思っているよりはるかに利口だ。敏感な嗅覚を持っているし、エサの好き嫌いもはっきりしている。例えば、身近なコイにしても、なかなか侮れない相手である。
「パンコイ」という言葉がある。コイを食パンで釣るのが「パンコイ」だ。コロナ禍でどこにも行けなくなってから、私は近所の川でパンコイをよくやるようになった。
針に食パンを付けて投げるのだが、コイはなかなか賢くて、すぐに食いついてくれない。
コイという魚は、思いのほか目がいい。食パンが目の前に投げ込まれても、針や釣り糸が見えてしまうと、まったく食べようとしないのだ。目だけでなく耳もいいのか、竿を投げたときの「シュッ」という音に反応し、逃げていくこともある。
あるとき、どうしてもコイとの勝負を制したいと思った私は、エサを工夫してみることにした。熟考の末に入手したのは、私が好んでよく食べる、もちもち感がたまらないローソンの「もち食感ロール」だった。
川岸で私が最初に1口食いついたあと、クリームがたっぷりとついたロールケーキを針に付け、コイの目の前に投げてみる。すると、それまで食パンに見向きもしなかったコイが一瞬で“ぶわー”っと寄ってきて、何の迷いもなく一心不乱になってむしゃむしゃともち食感ロールを食べ始めたのだ。その直後、すっかり警戒感をなくしたコイは私が垂らした針にいとも簡単に食いついてしまった。
このときに、コイには敏感な嗅覚があり、さらには甘いものに弱いと確信した。
魚以外の水中の生き物では、カニはすぐに匂いにやられる。
少し前に魚のエサにするためにカニを獲ろうとしたことがあった。そのとき、いわしの切り身をストッキングに詰めて海のなかに落としたのだ。すると、入れた瞬間に何匹ものカニが岩陰からわさわさと出てきてストッキングに群がり出した。コイ同様、カニも匂いには弱いようだ。
それぞれの特性を新たに発見できると、それだけで嬉しくなる。生き物を相手に知恵比べをするのは、楽しくてやめられない。