進化を続けるバス
ブラックバスの特徴は、何と言っても大きな口にある。この口を目いっぱい開け、自分と同じサイズのバスを飲み込んでしまうこともあるようだ。
好奇心が旺盛なバスは、バス釣りが流行する前までは何にでも食いついてきたそうで、誰でも簡単に釣れたと聞く。ところが今は、バスが賢くなってしまったため、釣るのがとても難しくなった。
鋭い伝達能力を発揮するのもバスの特徴だ。そのため、バス目当てのアングラーがやって来ると、集団で警戒心を高める。そうなると、その釣り場では一気にバスが釣りにくくなってしまうのだ。
数十年前までは、琵琶湖にバス釣りに行けば、大きなサイズの個体が1日に数十尾も釣れたという。しかし今は、小バスを釣るのも難しいような釣り場に変わってしまった。日本に棲みついたバスは彼らなりに進化を続けているのだ。
爆釣をもたらした特別なエサ
以前、オオカミウオという怪魚を釣りに北海道に行ったことがある。
これを釣るのに最適なエサがスルメイカであることを私は事前に調べていた。
そこで北海道に向けて出発する前に、私はすぐに家の近所のスーパーマーケットに行き、エサ用として大きなスルメイカを購入した。
北海道に到着すると、さっそくオオカミウオに挑んだ。船に乗って沖合に行き、購入したスルメイカを丸ごと針に付け、深海目掛けて一気に落とし込んでいく。
釣るのがとても難しいといわれるオオカミウオだが、乗り合いの釣り船の船長の助けもあり、見事オオカミウオを釣り上げることに成功した。
問題が起きたのはそのあとだ。餌のスルメイカを使い切る前にその日の釣りが終わってしまったので、イカをだいぶ余らせてしまった。しかし、捨てるのはもったいないと思ったため、空港でレンタルした車のなかに入れておいた。すると、夏場だったせいで腐らせてしまったのだ。
釣り場から空港までの帰り道、スルメイカはますます腐敗していく。買い物するためにお店に入るときも、スルメイカは車のなかに残したままであった。そのうちに、白っぽかったスルメイカは茶色に変色し、匂いも大変なことになっていく。少し触ってみると、指先に電気が走ったかのようにぴりぴりする。
(どうしようかな……。もう捨てるしかないよな……。ちょっと待てよ、考えがある!)
こうして熟成スルメイカの特製エサができあがった。
途中、漁港があったので、私はそこに車を止めた。スルメイカを車から出すと、すぐに虫が寄ってくる。それを追い払いながら切り身にし、針に付けて海のなかに放り込んでみた。すると予想どおり、入れ食いといっていい結果になった。
(腐ったイカはありなんや!)
大発見をしたような気分だった。
その後、三宅島に釣りをしに行ったとき、今度は意図的に熟成スルメイカを製造し、それを持ち込んでみた。
このときもめちゃくちゃ釣れて、期待を裏切らない結果を得た。
漁港の波止場から熟成エサを付けて投げ込んだら、その漁港の主のような50センチ超え級のグレが釣れてしまったのだ。
大きなグレを一生かけて狙う釣り人も多く、私のような初心者が気安く釣り上げるような獲物ではない。50センチ超えともなれば、プロでもなかなか狙えないサイズだ。