現実になる姿が、カラーで見えているか
投手陣では今永昇太に、準決勝の前のタイミングで「決勝戦の先発をお願いします」と伝えました。準決勝からは投手全員に用意してもらいますが、彼には決勝戦に合わせて準備をしてもらいます。
それから、大谷翔平です。
準決勝に勝ってアメリカとの決勝になったら、投手は総動員です。短いイニングで継投するイメージで、終盤になるほどプレッシャーがかかります。
そこで問われるのは、メジャーリーグの選手たちと戦ってきた経験であり、彼らを抑えてきた実績であり、その原動力となる地力です。
侍ジャパンに選んだ投手なら誰でも、メジャーリーガーに通用すると確信しています。ただ、相手側の受け止めかたは違うかもしれません。メジャーリーグで対戦している翔平やダルのほうが、その実力が分かっているだけに打つのは難しいと考えるのではないでしょうか。
侍ジャパンの監督を引き受けた当初から、決勝戦の終盤に翔平とダルを継投させるプランは温めていました。吉井理人投手コーチと厚澤和幸ブルペン担当コーチとも共有をしていましたが、「そうする」と決めるのではなく最後まで可能性を探っていくことにしていました。
エンゼルスは無理をさせたくない。大谷の考えは…
翔平についてはすべての打席をまっとうしてもらうので、投げることについては無理をさせません。ダルと同じように、身体がいける状態ならマウンドに向かってもらう、というスタンスです。
マイアミは気候が温暖で、日本よりも身体が動きます。練習中の選手たちは気持ち良さそうで、翔平もブルペン横でパトリック・サンドバルの話をしていました。エンゼルスのチームメイトであるサンドバルは、メキシコの先発投手として準決勝での登板が予想されていました。
翔平にサンドバルの特徴を聞くと、「投げっぷりもいいし、調子が良ければ打ち崩すのは簡単ではないです。ただ、急にフォアボールで崩れたりすることもあります」と話していると、「ちょっとバットを取ってきます。また戻ってきます」と言って、私たちの会話の輪から離れました。
翔平の姿がロッカールームへ吸い込まれると、通訳の水原一平が「実はエンゼルスと色々と話をしたんです」と教えてくれました。チーム側は無理をさせたくないでしょうが、本人がどんな考えなのかを確認しておきたい。私は一平に「じゃあ、少し話をするよ」と言い、翔平の戻りを待ちました。