「逆に? 逆に?」「ラッシャッセー」日常生活で遭遇する面白い人たち
――ご自身の演技についても聞かせてください。コラムでは「こんな人がいる『かも』」「こう言う『かも』」というのを大事にして役作りしているとおっしゃっていました。
佐藤 日常生活で遭遇する面白い人っているじゃないですか。約30分の電話中ずっと「はい……」しか言わない人とか。「逆に? 逆に?」が口癖の人とか。そういう人を失礼にならないように観察して、役に取り入れることは結構ありますね。
たとえば、『共犯者』(日本テレビ系)というドラマでコンビニ店員の役をやったとき、「いらっしゃいませ」というセリフを「ラッシャッセー」と言って芝居したんですよ。それは実際に見かけたコンビニ店員を参考にして役作りしました。
あとは、広告会社で営業をしていたときのお客さんに「き、き、き、基本的にあれなわけなんだけど」が口癖の社長さんがいたんだけど、舞台で社長役をやったときにその言葉をセリフに取り入れたりもしましたよ。
――最近気になった人はいましたか?
佐藤 コラムの中でも書いたのですが、夜のファミレスで新聞を読みながら「そこまでするか……」と何度もつぶやくおじさんがいましたね。「何をどこまでしてるんですか!?」って気になってしょうがなかった。
ただ、気になる人と出会ったとき、「この役に活かせそう」と具体的に考えているわけではありません。あとあとその出会いが芝居に活きることがある、という感じです。
――コラムには「人の影響を受ける自分が嫌いではない」というエピソードも綴られていましたね。
佐藤 人から影響を受けたり、人に影響を与えたりするのって楽しいと思うんですよね。人の話を聞いて、「俺はこう信じてたけど、確かにこういう面もあるな」と思える心って大事だな、と。
若い頃は「俺にはこれがあるから成功できる」「これがあるから俳優としてやっていける」という、確固たる何かに固執していました。だから、影響されやすい自分は俳優としてどうなんだろう、と悩んだこともあります。でも最近になって、影響を受けるのも悪くないなって。人の話を聞いて取捨選択することだって、自分のセンスによるものだから。
――最近は若手俳優の方と接する機会も多いと思います。ご自身の経験を踏まえてアドバイスすることはありますか?
佐藤 先日、先ほどもお話しした「ラフカット」の公演を行ったんです。4つの短編で構成された作品で、僕はそのうちのひとつに作家として参加しました。
僕の俳優としての道が開けたのは、26年前に出演した「ラフカット」の公演がきっかけだった。だから今回出演したキャストたちは、26年前の僕かもしれない、という思いもありました。