「最悪なのは、無能にもかかわらず何かやりたがるヤツ」押井守監督が明かす「組織を自滅に導く“要注意人物”の正体」

『押井守の人生のツボ 2.0』 #3

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「下だけを切っても無駄、上だけで集団を作るというのは不可能」

――ということは、この相談者は仕事のできる3割。彼女が常々アタマに来ている同僚は何もしない4割の人間ということですね。

押井 そうです。だからもし、4割の人間を切っても結局は同じ割合になり、もしかしたら相談者自身が4割に転落する可能性も出てくる。

 集団というのは周りを見て動いている。みんな周りを見て仕事をこなしているんです。同僚の人はきっと「彼女がやってくれる」と思っているので、上司に「できない」と言えているんじゃないの?

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――かもしれないですね。上司が彼女の要望を受け入れるのも、相談者に回せばいいと考えている可能性も高い。

押井 そうです。上司というのは、本当にヤバい状況に陥らない限り大きな決断は下さないもんなんです。できる上司なら、下だけを切っても無駄、上だけで集団を作るというのは不可能ということに気づいている。

――ということは、この相談の答えは、やっぱり「仕方ない」ですか?

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押井 そうです。それに彼女は、そういう「3割」に入っている自分を嫌いじゃないと思うよ。「私はあの甘えた同僚とは違う」わけだからプライドも満たされている。それが彼女を残業させている原動力ですよ。もちろん、残業は面倒くさいかもしれないけど、自分の立ち位置、「3割」の人間だという確認になるからいいじゃないの。(後編に続く)