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「最悪なのは、無能にもかかわらず何かやりたがるヤツ」押井守監督が明かす「組織を自滅に導く“要注意人物”の正体」

『押井守の人生のツボ 2.0』 #3

note

押井 わたしです。

――押井さん、まるで昔からあるような原則ですよ!

押井 わたしはずっと昔から、この原則を唱えて来た。軍隊だろうが職場だろうが、人間の集団は全部、この原則で回っている。「3」が黙っていてもやる優秀な人材。「4」は何もしない。そして「3」は足をひっぱるだけ。じゃあ、邪魔する「3」を切ればいいと思うでしょ? 切ると今度は残った人間の間でまた「3:4:3」に分かれる。

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 使える3人だけを残しても、その3人が3つに分かれるだけ。どうあがいても一緒。だから「原則」なんです!

――押井さんが独自に編み出した原則とはいえ、めちゃくちゃ説得力ありますね。

「軍隊には3種類の兵隊しかいない」

押井 よくできた理屈なんです。長年にわたって観察してきた結果を自分なりにまとめて生まれた原則。ベースになっているのは軍隊ですよ。軍隊には3種類の兵隊しかいないと言われているんだけど、知ってた?

――もちろん、知りません。

「軍隊で最悪なのは、無能にもかかわらず何かやりたがるヤツ」 ©文藝春秋

押井 一番いいのは、言うまでもなく有能な兵士。何もしないヤツより最悪なのは、無能にもかかわらず何かやりたがるヤツ。こういうヤツがいると味方全員を殺すことになってしまう。自滅あるのみになっちゃう。それは社会でもある程度言えることで、仕事をやりたがるんだけど使えないというのが一番困る。

――足手まといなヤツ、ですね。

押井 使えない原画マンの画を作監が一生懸命手直しするんですよ。それに、これは個人の問題ではなく集団の心理。改善しようとひとりでがんばっても無駄なんです。