押井 そう、メチャクチャ怒った。豚肉は宮さんの大好物だから、「何であんなヤツらに食わせるんだ!」ってすごい剣幕。で、何が言いたいかというと、宮崎駿というおっさんは、誰と暮らすのにも向いてない。向いてないけど、ひとりでいることにも耐えられない。本当にやっかいなおやじなんだということですよ。
「まずは話してみる。それでもダメなら家庭内難民。それでもダメなら…」
――それでも許されるのは天才だからですね、きっと。この相談者たちは天才じゃないから大変なのかもしれません。
押井 天才だから許されるとか関係ないです。
最近は男のほうに、こういう繊細というか細かいタイプが多いのかもしれない。わたしの身近にもうひとりいます。助監督をやっている金子(功)です。飲み会にはもれなく来るヤツで、その食べっぷりが尋常じゃない。
右手で餃子を摑みながら、左手にチクワにキュウリを詰めたものを持って口に運ぶ。「両手で食うなっておふくろに言われなかったか?」と聞くと「何のこと?」だからね。そのくせ、人のことには口を出してきて、わたしが居酒屋で卵焼きの大根おろしを全部取ったら「何でそんなことするんですか? 失礼だと思わないんですか?」って。
「おまえ、大根おろし好きだったの?」と言うと「そういうことじゃなくて、ひとりで全部取っちゃうことを言っているんです!」だって。「はあ? どうせおまえ、俺に金を払わすつもりだろ?」と言うと「はい、そうです。それが何か?」だもん。もうありえない。
――押井さん、食べ物の話ばかりですよ……。
押井 まあね。だから、宮さんや金子のような男は細かいくせに、自分のことには気づかないんです。この相談者ふたりも、奥さんの立場から見れば、おそらく何かあるはず。だからわたしの答えは、まずは話してみる。それでもダメなら家庭内難民。それでもダメなら離婚しましょう、です!
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