2015年に刊行された単行本『嫌老社会を超えて』を再構成、大幅加筆のうえでタイトルを変えて新書化。「孤独」の時間を楽しみ、老いに伴う体や心の不調を穏やかに受け入れ、自立した生き方を心がけ、心が辛いときには「回想」することで癒しを得る。登り調子を過ぎた、人生の「下山」の時期を安らかに生きるための姿勢を、柔らかな言葉で語りかける本が大ヒット中だ。既に部数は単行本で出したときの10倍。
「単行本の段階で内容には自信があったのですが、著者のパーソナルな実感に焦点を絞って加筆していただいたことで、より読者に響く内容になったのではないかと感じています」(担当編集者の川口由貴さん)
主な読者層は50代以上の男女。昨今では老いても盛んに働き、趣味にも精を出すことを強いるかのような言説も多い。そんな風潮への一種のアンチテーゼとしても読まれているようだ。
「85歳の五木さんは、戦後、大陸からの引き揚げで壮絶な体験をされ、信じていた価値観がひっくり返るという経験をされています。その中で『前向きに』の呪縛を捨てる、『シフトダウン』することの大切さを提案されています。誰もがなんとなく先の見えない不安を抱える中、『頑張り過ぎなくていい』『年をとるのも悪くない』という人生の先輩からのメッセージが読者に届いたのだろうと思います」(川口さん)
2017年7月発売。初版3万部。現在16刷30万部