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「感情が入り込むと、身動きが取れなくなってしまう」
今泉が原発に興味を持つきっかけになったドキュメンタリー映画「日本一大きいやかんの話」の制作者である東京の男子高校生は、制作意図を「原発に賛成する人たち、反対する人たちの“橋渡し”をしたい」と語っていた。
今泉も原発賛成派、反対派の人々と話をする中で、その“橋渡し”をしたいと思うようになった。しかし今泉の目に両者の対立は、“宗教論争”のような状態に見えた。
「感情が入り込むと、身動きが取れなくなってしまう。答えにつながる道を見えなくしているのは、感情だと思うんです」
今泉はまず自分に見える、今ある現実から原発についての思考を再スタートした。
電力を使わない選択はない、ならばまずは原子力のこと、原発のことをもっと知らなければならない。
入り口は躊躇を振り切って訪ねた福井県庁の「原子力安全対策課」だった。原発を建てたことで福井県が得た「電源三法交付金」でインフラが整えられていること、待ち合わせ場所になっている駅前の“恐竜マスコット”もそのお金でできたことを知った。未知の扉の向こう側を初めて覗いたような気分だった。
原発反対派という、接したことがなかった人々の考えも知った。1つの行動が1つの扉を開け、新たな情報を与えてくれる。その情報がさらに先を知ろうとする欲求を生み、新たな行動につながる。
今泉は今春、福井南高校を卒業して教育学を学ぶために東京の大学に進学した。自らが原発を通じて学んだことの延長線上に、今泉が目指す教育学はある。
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