1年生の今泉の行動に触発された1人が雨宮ゆめだった。学年は今泉の1つ上の2年生だった。

 現在、福井県立大学経済学部に通う雨宮は、母校の福井南高校でインタビューを受けてくれた。大学では経済の基礎を学びながらスポーツを始めた。選んだのは、氷上の格闘技とも言われるアイスホッケー。身につける装具だけでも重さが10キロを超える過酷なスポーツだ。

 筆者の眼の前の雨宮は、華奢小柄な19歳。

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「とてもアイスホッケーをやってるようには見えないね」

 こう言うと雨宮は、快活に笑い、

「よく言われるんですが……がんばってやってます」

 といって顔をほころばせた。

雨宮ゆめさん(中央)、今泉友里さん(右)

 後日、雨宮の後輩に、雨宮がアイスホッケ―をやっていると伝えると、後輩たちは一斉に「えーっ」と声を張り上げ「信じられない」と声を揃えた。後輩たちにとって雨宮は、どこか儚げな先輩と映っていたようだ。

不登校から抜け出し“ある映画”に出会う

「(中学校には)ほぼほぼ行ってませんでした」

 雨宮は中学時代、不登校の生徒だった。福井南高校に進学したのは、生徒数が少なく敷地が広いため、人の密度が高くないことが理由だった。それでも1年生時は休みがちだったという。

「どうだ? 来れそうになったら顔を見せてくれよ」

 そんな連絡を担任の先生と取り合いながら、1年生の後半からは登校する日が増えていった。そんな矢先に、東京の高校生が作った原発を題材としたドキュメンタリー映画「日本一大きいヤカンの話」を見に鯖江市へ出かける機会があった。福井県は日本最多の11基の原発が存在する県で、原発教育は盛んである。

東京の高校生が作った映画「日本一大きいやかんの話」

 1学年下の今泉と会うのもその日が初めてだった。原発に特別な興味がある訳ではなく「同じ年の高校生がどんな映画を作るんだろう」という軽い興味だった。