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 実際にはどうなのだろう。真備町で出会った人にランダムに聞いてみた。

「えっ、新しいハザードマップができたんですか」。71歳の女性はきょとんとした顔つきになった。

「市広報の5月号に挟んであるはずですが」と教えると、戸棚にしまい込んでいた市広報を引っ張り出してきた。まっさらなハザードマップが挟まれていた。

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L1想定のハザードマップ

「今回の新しい浸水想定も絵空事じゃない」

「これが1000年に1度の降雨でどうなるかという想定ですか……。私の家は10m以上浸かるのね。想像できない深さだな」。眉間にしわを寄せてマップを見入る。

 5年前、女性の家は1階の天井まで浸かった。

 浸水寸前に避難して助かったのだが、本当は逃げる気がなかった。仕事が終わり、ほっとひと息ついていた時に、市内に住む娘から電話があった。娘は小田川の水位上昇をインターネットでチェックしていて、恐怖を覚えたのだ。「お母さん、大変な事態が迫っているから、早く逃げて」。半信半疑で避難を始めたが、その時にはもう近所が浸かり始めていた。

 近くの集落の電柱には、2階の屋根と同じ高さで「印」がつけられている。守屋さんら箭田地区のまち協のメンバーが引いて回ったオレンジラインだ。

2階の屋根と同じ高さに「印」の痕跡がある。箭田まちづくり推進協議会のメンバーが引いた「堤防の高さ」のオレンジライン

「あんなに高いところに印をつけて、『浸かるわけがない』と皆で笑っていたんです。ところが、その通りになりました。だから今回の新しい浸水想定も絵空事じゃないんでしょうね。次は早めに逃げます」と話していた。

「失敗の裏返し」から得た教訓

 続いて出会った85歳の男性も、新しいハザードマップを見ていなかった。

「『10m以上』の深さか……。なかなか想像できないけど、あり得るのでしょうね。前回、私は早めに逃げて難を逃れました。次回も早めに逃げます」と強く語っていた。

 もちろん、「新しいハザードマップを見て、あまりの深さにショックを受けました。どこに逃げればいいのでしょうね」(30代女性)というような人もいた。

 大本参事は「配っただけでは周知できません。市の防災職員は今、土日もなしに、2班に分かれて、住民の会合などに新しいハザードマップの説明に出掛けています」と話す。

 救いはある。「10m以上」という衝撃の新想定を、「嘘だろう」と笑い飛ばす人には出会わなかった。オレンジラインを笑う人が多かった被災前とは大違いだ。

 それは災害を甘く見て逃げ遅れ、多くの人が2階の屋根で救助を待ったという「失敗の裏返し」なのかもしれない。