ところが、倉敷市が新たに作成したハザードマップでは、想定浸水深がオレンジラインの2倍にもなる。
にわかに信じがたい深さだった。守屋さんも「新しいハザードマップを見た時には衝撃というか、すぐには理解できませんでした」と語る。ただ、「私達が皆さんに笑われた時と同じことで、現実に起こり得る浸水なのかもしれません」と話す。
全ての地点でシミュレーションを行い、浸水想定区域図を作成
それにしても、なぜそのような想定になったのか。そもそも、高梁川や小田川の想定浸水深はどのようにして算出したのか。
河川ごとの浸水想定は、国や都道府県が深さや範囲を示すよう水防法で定められている。対象は全国約1万7000河川。前提となる降雨量は従来、100~200年に1度の確率で降る大雨で計算していたが、2015年の水防法改正で、1000年に1度の大雨とするよう変更された。気候変動で災害が激甚化しており、「考えられる最大規模」の降雨でシミュレーションすることになったのである。
具体的にはまず、全国を似た降雨特性を持つ15のブロックに分ける。高梁川や小田川は瀬戸内ブロックだ。
このブロックで最大規模の降雨モデルとして採用されたのは1976(昭和51)年9月に来襲した台風17号だった。台風自体は長崎県に上陸したものの、香川県の小豆島に48時間で1076mmという雨を降らせ、真備町でも大規模な内水氾濫が起きた。
高梁川流域の降雨量は小豆島ほどではなかったが、国は「前線の位置がずれれば同様の降雨が起こり得た」として、高梁川流域で48時間に674mm、小田川流域では48時間に888mmの雨が降るという条件で計算した。決壊の恐れがある場所で破堤するとどのようになるか、全ての地点でシミュレーションを行い、各所ごとの最大浸水深を重ね合わせて浸水想定区域図を作成したのである。
こうした浸水想定は「L2」と呼ばれている。従来の想定「L1」に対して「レベル2」というわけだ。
ハザードマップで防災学習ができるように工夫
国や都道府県が河川ごとの浸水想定を完成させると、市町村はデータを入手し、指定緊急避難場所や防災重点ため池、土砂災害警戒区域などの情報を加えて、ハザードマップを作る。