まきび公園は、真備町と関わりのある吉備真備(奈良時代の学者・政治家)を記念して造られ、旧真備町時代の1986年に完成した。L1想定(100~150年に1度の大雨)のハザードマップでは洪水エリアから外れていたが、L2想定(1000年に1度の大雨)だと駐車場などが浸かる。そうした場合、まきび公園から1.5kmほど離れた山にある真備総合公園の体育館へ移ることになるのだろう。だが、その時には48時間で888mmという豪雨になっている恐れがある。子供達の足で本当に歩けるだろうか。
「市役所がどの段階で避難情報を出すか分かりませんが、L2想定の豪雨だと『逃げろ』と言われた時にはもう雨が強くなりすぎていて、外にさえ出られないかもしれません。避難どころではなくなっているかも」と功一さんは身震いする。
「早めの避難」は具体的に考えるとかなり難しい
倉敷市役所の大本進・防災危機管理室参事が、内水氾濫が起きた時の避難について指摘していたのを思い出した。川など外からあふれて来る洪水に対して、地域内に降った雨が用水などからあふれてくるのが内水氾濫である。48時間に888mmの雨だと、内水氾濫は十分に起こり得る。大本参事は「膝まで浸かったら地面に何があるか分からなくなるから、杖をついて歩きなさいと言われていますが、あふれるのは泥水なので、くるぶしが隠れる程度でも、地面は見えなくなります」と話していた。
そうしたことも考え合わせると、L2級の豪雨になってからだと、避難できない恐れがある。では、雨が降る前に逃げられるかというと、これもまた難しいだろう。
「早めの避難」とは言うものの、具体的に考えるとかなり難しい面もある。
さらに、5年前の西日本豪雨では、隣の総社市や、岡山市まで逃げた人がいた。だが、L2想定のハザードマップでは総社市の市街地も浸かる。岡山市も浸かる。同時に浸かるかどうかは不明だが、「都市間避難」もできなくなるおそれがある。
「そうなったら、救援も来ませんよね。よそも被災しているし、広範囲に被害が出ているかもしれないから」と功一さんが言う。「そもそも10m以上浸水したら、何日浸かったままになるのだろう」。前回は5m強の浸水で、3日間水が抜けなかった。
「救援も来ない。水が引くのも日数がかかるとなると、逃げて生き延びられても、食料確保などの問題が出てきます。真備町のように山にしか逃げるところがない地区は、避難する時にキャンプ用品を携行するなどしなければなりませんね」
これらは、L2想定だからこそ考えておかなければならない内容かもしれない。
小田川の河道改修工事はL2想定の雨量だと効果がない
さらに、L2レベルの降雨となると、行政がこれまで行ってきた復旧・復興工事も役に立たないという事態になりかねない。
市は小田川の堤防に隣接して「復興防災公園」の整備を進めてきた。堤防道路の川原側に広場を整備し、内陸側には堤防と同じ高さで盛り土をする。盛り土には2023年度中に全面ガラス張りの多目的室や災害用備蓄倉庫を建設する考えで、公園の名称は公募で寄せられた案から「まびふれあい公園」と決めた。