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堀井 そうなんです。だから、退社の日も盛大に送り出してもらって、「本当に嫌です~」なんて泣いてくれた後輩と3日後ぐらいにエレベーターで会ってしまって、ごめんごめん、みたいな(笑)。

 独立する前に不安に思っていたことはまったく不安じゃなかったし、ああ、これが先にフリーになった人たちが皆言ってた「なんとかなるよ」だったんだ、と思ってます。

 

仕事相手との“仲間”みたいな感覚がすごく居心地がいい

――前編では“母”“女子アナ”といった“型”がある方が生きやすかったというお話がありました。今はもう“型”は意識しないですか。

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堀井 もう何もないですね。また1人の人間に戻ってきた感じがすごくあります。「妻」としてという意識はなかったですけど、「お母さんだから」は強かった。子どもに迷惑がかかることはやめなきゃとか、服装とかね。でも、もう今は、型はなくてもいいんでしょうね。

――働き方もこの1年で大きく変わりましたよね。

堀井 フリーって約束されたものが何もないから面白いですよね。会う人も行く場所も毎日違って本当に視界が開けたし、それは「音」に関してもそうで。

 私は27年間、放送にのる音ばっかりに意識が行ってたけど、公共機関のアナウンスとか、駅で流れるCM、資料館でかかるナレーションとか、本当に多種多様な音があったことに気付かされました。

 仕事相手についても、年齢も既婚かどうかも、学歴もどこに住んでいるかも全然知らないけど、ただ好きなことを成し遂げるために一緒にいる。感覚的には“仲間”みたいな(笑)。それが今、すごく居心地がいいんです。

 

撮影=佐藤亘/文藝春秋