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「Winny事件」さえなければ今の日本は変わっていた 42歳で急逝した天才プログラマーの7年半を奪った「著作権法」という闇

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genre : ニュース, テクノロジー, 社会

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金子氏の弁護団事務局長だった弁護士の壇俊光氏は、2022年4月に『Winny 天才プログラマー金子勇との7年半』(インプレスR&D)を出版し、金子氏の人物像やWinnyの核心を小説仕立てにまとめた。そこに2ちゃんねる開設者のひろゆき氏が、本の推薦文でこのようなコメントを寄せている。

《LINEでの動画共有とかビットコインなどの仮想通貨とか、P2Pといわれる技術が使われています。その最先端がWinnyでした。金子さんがいれば、日本で発展した技術が世界で使われて、世界中からお金が入ってくるみたいな世の中にできたかもしれなかったんですけどね。》

7年半は取り返しのつかない損失になった

もし、このひろゆき氏の言葉が正しかったとしたら、Winny事件で金子氏が逮捕、起訴されて裁判が行われていた7年半は、金子氏だけでなく日本全体にとっても取り返しのつかない空白期間だったといえるだろう。それがなければ、日本は今ごろIT先進国として世界中からお金が集まっていた可能性もあるのだから。

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この記事の冒頭において、2023年2月時点での世界の企業時価総額ランキングの上位10社に日本企業は1社も入っていないと書いたが、では、上位を占めているのはどこ国の企業なのか。それは、言わずと知れた「GAFAM」と呼ばれるアメリカのIT・通信企業5社と、バークシャー・ハサウェイ、テスラ、エヌビディア、ユナイテッドヘルス・グループ、エクソン・モービルのアメリカ企業4社。アメリカ企業以外で唯一入っているのが、サウジアラビアのサウジアラムコである(2位)。そして日本企業で最も順位が高かったのは、上位50社からも外れた52位のトヨタ自動車という体たらくである。

「GAFAM」のうち、アマゾンとグーグル(現・アルファベット)、フェイスブック(現・メタ)の3社は平成生まれ。ちなみに中国のIT企業、アリババとテンセントも平成生まれである。