坂田 そう、本当に番組に応募してきた子たち。そういう普通の子が出る番組が、60年以上続いてるんです。
ただ、子どもと歌は日々入れ替わるので、「社会が少しずつ変わってきた」というのが、子どもたちの服装や歌のジャンル、歌詞などを通して伝わるんですよね。そこが、あの番組のいいところでもあります。
病気も違和感も「受け入れて、一緒に走る」
──変化といえば、坂田さんが《うたのおにいさん》になって、約40年が経ちました。当時と70歳の今、心身の変化はいかがですか。
坂田 そりゃもう、見た目はシワが増えたなとか。あとは、目にくるね。でかいコンサートには必ずバミリ(立ち位置の目印用テープ)があるんだけど、それがよく見えないし。朝も早いよ。4時か5時には目が覚めて、夜も何回か起きちゃう。こういうのはやっぱり、加齢ですね。
──そういう変化には、抗っていますか。
坂田 いや、受け入れてますよ。あとね、子どもと一緒にいれば、大丈夫。
子ども向けのステージはだいたい60~70分ぐらいだけど、直前にちょっと体調が悪くても、ヤバいと思ったことはないですね。それはやっぱり、子どもといるからなのよ。
──子どもパワー?
坂田 絶対にそう。どんなに疲れてても、子どもが歌を聴いてくれるステージは特にね、魔法にかかりますよ。子どもがいて、さらにそのお父さん、お母さんがいたらもうあなた、完璧よ。ガンガンいけちゃう(笑)。
あと、これは70近くになってようやく思うようになったけど、加齢とか病気とか、人生いろいろあるじゃない。でも、それと「仲良くする」。耳のこともそう。
──仲良く。
坂田 そう。一緒に走る、伴走者みたいな感じ。「さあさあ、一緒に行きましょう」と。
──違和感があっても、一緒に丸め込むような?
坂田 そうなのよ。だってさ、違和感は別に、取り除くようなものじゃないと思うから。
耳が聞こえにくくて、違和感がある。でも、ずっとあるものならば、「とんでもないやつだ!」と敵視しないで、「あら、そこにいらっしゃるんですね」と。違和感と仲良くなると、一緒にいるのも嫌じゃなくなるよ。そんな気持ちかな。
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