ただ、「親に心配をかけたくない」って気持ちが強くて、詳細は言えませんでした。あの頃の私はまだまだ子どもで、視野が狭かったんです。
結局、ホストファザーが長男に大怪我を負わせたことで、虐待と判断した行政が動き、私も保護されることに。その後は留学中にできた友人の家に移り住んで、無事に1年の留学プログラムを終えました。
過酷な環境でも日本に帰国しなかった理由
――誰が見ても辛い状況の中、途中で日本に帰る選択肢はなかったのでしょうか。
NARUMI それはまったく考えていなかったです。私が留学する前に、高校の同じクラスの子が留学していて、その子も1年のプログラムで参加したのですが、半年で戻ってきてしまって。詳しくは聞いていませんが、文化も環境も違う生活に耐えられなかったようです。
途中で帰国することも、もちろん選択肢のひとつ。でも、その子は日本に戻ってきたのに嬉しそうじゃなかったんですよね。ずっと、諦めたことを後悔していました。
留学は期間が決まっています。裏を返せば、どんなに辛いことも時期がくれば終わるんです。だったら、「後悔しないためにも『やりきった』と思って帰国したい、それまでは何があっても頑張ろう」と思っていました。
――もし今のNARUMIさんがあの頃に戻ったとしたら、どう行動すると思いますか。
NARUMI 留学を続けながら身の安全も確保するなら、まずは親に状況を説明して、親から日本の留学団体に相談してもらいますね。留学団体には必ず英語も日本語も話せる人がいるので、その人から現地のエリアコーディネーターに連絡を入れてもらう。そうすれば、英語が拙くても、子どもでも、状況は開けていたと思います。
撮影=細田忠/文藝春秋