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爆笑問題・太田光とスギちゃんへの感謝の気持ち

 小説を読み終えたあと、思い出した先輩の言葉があるという。

「葉由ちゃんと土橋君は、なんども壁にぶち当たりますが、芸人の世界は、本当にそうなんです。そんなときに思い出すのは、先輩二人の言葉です。

 一人は、爆笑問題の太田光さんです。2021年に『ツギクル芸人グランプリ』っていう大会に出て、2位になったんです。『負けた。やっぱりだめか』、と落ち込んでいたんですが、MCをしてくださっていた太田さんに挨拶に行くと、すれ違いざまに『実質、優勝だから』と言ってくださって。力をもらいましたね。

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©文藝春秋

 もう一人は、スギちゃんです。営業でいっしょになったときに、スギちゃんが『プレゼントコーナー』っていいながら、じゃんけんをして勝ったファンの方に、なにかを渡していたんです。ファンサービスがすごいなぁと思っていたら、スタッフの方が、『あれは家でいらなくなって捨てるモノを処分しているらしいよ』って教えてくれて。実際に見たんですが、もう覚えてないくらいどうでもいい〈ゴミみたいなもの〉を渡していて(笑)。

 このときに、『構えなくたって、なんだっていいんだぞ!』ということを、背中で見せてくれた先輩スギちゃんには感謝をしています。あのときから、肩の力を抜いて、営業ができるようになった気がするんです」

この小説を一言でいうならば…

 著者の森バジルは、お笑いが好きで、Yes! アキト、怪奇!YesどんぐりRPGのファンであるという。松本清張賞の選評では、選考委員の辻村深月さんが「抜群のきらめきに満ちていた『青春小説』パートは見事だった」と第2章を評価していた。Yes! アキトは続ける。

「芸人の世界の生々しさが、『ノウイットオール』には見事に描かれていましたね。お笑いを取り上げた小説って、なぜか、この世界の厳しい現実を描いたものが多いんです。又吉直樹さんの『火花』も、あさのあつこさんの『The MANZAI』も、ちょっと苦しい葛藤が描かれていますよね。でも、森バジルさんの小説は、とにかくキラキラしていて、そこも新鮮でしたね。この小説を一言でいうなら、『ダブルパチンコ』でしょうか」

最強の持ちネタ、ダブルパチンコ ©文藝春秋