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 ご住職も驚かれて、確認されました。

「あなたが、賽銭箱からお金を盗っておられた方ですか」

「はい、そうです」と、男性は特に謝るでもなく、少し開き直った態度だったようです。

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 そのようすに驚きながらも、ご住職がとりあえずお話を聞きましょうと、お座敷に招き入れると、男性はこんな話をされたそうです。

賽銭箱の中に入っていた「一枚の封筒」

 男性がいつものように賽銭泥棒をしていると、お札に混じって、一枚の封筒が中に入っていたそうです。封筒の中身はお金かもしれないので、そのまま家に持って帰ったそうです。

 家に着いて封筒の中を見ると、手紙が一枚入っているだけで、お金は入っていなかったそうなんです。

 男性は、お金が入っていない事を残念に思ったそうですが、手紙の内容も少し気になったので、読んだのだそうです。

©iStock.com

 その手紙は女性の字で書かれていて、その内容は怒りに満ちていたらしいのです。

「今まで病気を治してくださいって、何度も何度もあなたにお願いしましたよね。でも結局、治りませんでした。それに、私はお金が欲しいってあれだけお願いしたのに、結局宝くじも当たらないし、仕事も上手くいきません。どうなっているのですか」

 そんな悲しい愚痴が書かれていたそうです。そして最後の一行には、

「さようなら、私これで死にます」

 と書かれていたのだそうです。

 この手紙を読んだ男性は、怖いなと思いながらも、

「よく考えたら俺の考えてることと一緒じゃないか」

 そう思ったというのです。