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賽銭泥棒の言い分は

 どういうことかと言いますと、この男性は以前、何度もそのお寺様にお願い事をしに行っていたそうなんです。しかし、未だかつて願い事を聞いてもらったことがないそうなのです。

「ある時には1000円を入れた。でも、1000円分の何かを返してくれたかっていうと、何も返ってきてない。だから俺は自分が入れた賽銭以上のものをこの賽銭箱から盗っている。これは俺が悪いわけじゃない。住職がもし俺を訴えようとするならその前に神仏を訴えろ」

 こんな話を犯人の男性がするそうなんです。

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 これに驚いたご住職は、仏様や神様というものは、基本的に契約をするものではないなどと、色々説明されたそうなんですけれども、「俺はもうここでは物を盗ったりはしないけど、他ではやる」と言って帰って行かれたそうなんです。

豹変した男性の態度

 警察の方に連絡しようか、ご住職は非常に迷われたそうです。犯行の告白を捕まってもいないのに何故しに来たのか。男性の考えは、現在では一般化していて、中には見返りがあるという寺社もあるのかもしれないと思い、一日いろいろと考えてからにしようと思われて、その日は通報されなかったという事でした。

 そして次の日になりますと、あの男性、つまり犯人が朝早くにまた来たそうです。

 今日は何の話をされるのだろうと思っていると、昨日とは随分態度が変わっていたそうなんです。

「住職、すいません。あの、昨日色々言いましたけど、お経をあげて頂けませんか」と、ちょっと怯えた様子で言ってきたそうです。

「どうされたのですか。昨日とは随分と態度が違う様ですが」

 驚いたご住職はそう聞かれました。

「いや、実は昨日あれから家へ帰りますと、怖いことがあったんです」

 震える声でこんな話をして来たそうです。