京都・蓮久寺の三木大雲住職のもとには、奇妙な体験をした人、助けを求める人たちが自然と集まる。盗まれた仏像の行方、タクシー運転手の臨死体験、夢の中で怒るお爺さん――。

 そんな実話や自身の体験など、現代の怪談、奇譚の数々を収めた『怪談和尚の京都怪奇譚 妖幻の間篇』(文春文庫)より、「盗まれた仏像」を公開。見えない世界に触れることで、あなたの人生も変わる……のかもしれない。(全2回の2回目/最初から読む)

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 数年前に、私のお寺の賽銭が盗られる事件がありました。次の週に犯人は逮捕されて、全国ニュースにもなりました。このニュースを見たある知り合いのご住職様が、「実は私のお寺でも、お賽銭が盗られる事件があったんですよ」と教えてくださいました。このお話がとても不思議でしたので、今回お話しさせて頂きます。

 お話しくださったお寺様でも、私のお寺同様、泥棒に賽銭箱を荒らされたそうです。警察の方からお聞きしました所、賽銭箱からお金を盗る為の器具があり、誰でも簡単に作れるのだそうです。このお寺様は、どうやらその器具を使用した犯行に遭われたらしいとの事でした。

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 この器具を使っての犯行は、賽銭箱を一切傷付けません。ですので発覚がなかなか難しいそうです。しかし、それをいいことに、犯人が賽銭箱の中身を全て盗った日があったそうです。ですので、ご住職がおかしいと気が付かれました。

 防犯カメラを見ますと、そこには賽銭泥棒の姿がはっきりと映っていたのだそうです。しかし、いつ来るのか分からない犯人を捕まえる事はなかなか出来ません。困ったご住職は警察にも通報し、警察官が張り込みなどもしてくださったそうですが、張り込みのない日に犯行があったりして、すぐには捕まえられなかったと仰います。

賽銭泥棒の告白

 困ったなあと思っていたある日、ある男性がお寺に来られ、こう言われたのだそうです。

「実は私、このお寺からいつも賽銭を盗んでいました。今日は聞いて頂きたい話があるのですが、いいですか」

 このように言われたのだそうです。