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実家から盗んだ物をメルカリに出品

 被告は給与収入だけでなく、もともと別の手段でも金を稼いでいた。メルカリへの出品だ。しかも自分の所有する不用品を売るのではなく、親類から得た品物や、さらには親類宅から無断で持ち出した貴金属などを売りさばいていた。このメルカリへの出品も、ふたつの殺人事件に大いに関係してくる。

「かねてより実家から物を盗んでメルカリに出品していた被告人は、2020年12月6日、祖母のオパールリングなどを出品していた。これを見つけた母の富士子が、被告人に出品取りやめを申し出るが被告人は拒否した」(検察側冒頭陳述)

 そのため、富士子被告は大悟被告の新しい恋人に連絡した上で出品を取り下げるよう言付けたという。これが大悟被告の逆鱗に触れた。実家に赴いた被告は富士子被告の首を絞め、仰向けに押し倒したうえ、踏みつけるなどの暴力を振るい、全治14日の傷害を負わせた。

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金庫から盗みを働き、懲戒解雇に

 さて、富士子被告の住む家と、姉であり、殺人の被害者である旬子さんの住む家は同じ敷地内にあった。老後の生活に不安を抱いていた富士子被告は、この頃「リバースモーゲージ」という制度の存在を知った。自宅に住みながら、自宅を担保に毎月の生活費を借りるという仕組みだ。契約者が亡くなったあとに、不動産の売却代金で元金を返済する。富士子被告は、土地を担保に4000万円の融資が受けられる可能性があるとこのとき思っていた。そして、敷地から実母や旬子さんが立ち退かない限り、要件を満たせないとも思っていた。実際に銀行に相談には行っていない。だが、2020年末ごろから、富士子被告は「2人が施設に入ってくれればいい」と考えるようになっていた。

富士子被告の住む家と姉の家は同じ敷地内にあった ©高橋ユキ

 いっぽうの大悟被告は2021年2月ごろ、内妻のローン買い取りのため、のちに放火殺人の被害者となった元伯父の和彦さんに相談を持ちかけ、2500万円を借りたのだが、同月、またもや逮捕された。会社の金庫から盗みを働いたためだった。これにより、懲戒解雇となる。

「被告人は、マンションの買取資金の一部について銀行から借入をしようと思っていたため、収入が途絶え、持分の買い取りが困難になった。追加の資金援助として和彦さんからさらに1000万円を借りたが、不安を感じていた」(同前)