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寝ていた伯母を階段の上から落とし…

 その頃、大悟被告は、富士子被告から「リバースモーゲージ」の存在を聞き、その借金も、マンション買取に回そうと考えるようになる。ところが旬子さんは施設入所を拒んだ。ならば殺害し、祖母は施設へ入所させよう。こうして1件目の殺人は起きた。

「2021年4月ごろ、旬子さんに不凍液を飲ませて殺すことを決意した被告人は、ホームセンターで不凍液を購入し、ネットで検索したのち、旬子さんの好きなコーラとウイスキーに不凍液を混ぜたものを持って富士子の家に行き『旬子さんにウイスキーを飲ませたいから』と言い、旬子さんを呼び寄せた。ウイスキーのコーラ割りを作って飲ませて、さらに飲ませるために自宅に持ち帰らせた」(同前)

 富士子被告は旬子さんが自宅に戻ってから初めて、飲み物に不凍液が入っていたことを聞かされ、協力を求められたという。以降、2人は日をまたぎ複数回、旬子さんに不凍液を飲ませてゆく。そして4月20日深夜。

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「今しかない、覚悟決めろ」

 大悟被告からこう迫られた富士子被告は、ともに旬子さんの家に向かう。不凍液の影響で「台所の床に横になって、グーグーと、いびきをかいて寝ていました」(富士子被告の証言)という旬子さんを担ぎ、階段の上から落とし、殺害した。

なぜ大悟被告は母親に暴力を振るったのか

 不凍液入りのウイスキーやコーラは回収していた。数日後、死んでいる姉をたまたま発見したように装い、富士子被告が119番通報した。

 当初、旬子さんの死は事件性がないとみなされており、解剖されないまま火葬されるはずだった。ところが、その直後、大悟被告が富士子被告に凄惨な暴力を加え、金品を奪ったことで逮捕。葬儀場に安置していた旬子さんの遺体を警察が司法解剖に回したことから、事件が発覚するに至った。富士子被告は約40日間の入院を余儀なくされた。

 なぜ大悟被告は母親に暴力を振るったのか。それは“和彦さん殺害を断ったから”だと、検察側は指摘している。逮捕直前、大悟被告はひとりで和彦さん宅に向かい、家に火を放っていた。

#2に続く)