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総額10兆円の明るい廃墟、593mの世界一高い未完成タワー…中国のスゴすぎるゴーストタウンはなぜ爆誕してしまったのか?

2023/07/20
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高さ597メートル、世界6位の高層ビルが廃墟に

©高口康太

「おお、でかい!」

 思わず声が漏れてしまう。高さ597メートル、世界6位の高層ビルにして、「世界一高い未完成建築」として名高いのが天津市にある高銀金融117だ。2008年に着工し、その7年後には最頂部まで完成していたが、そこでお金がなくなり工事はストップ。野ざらしにされてきた。

 ちゃんと壁を作った主塔部はまだいいが、隣にある付設ビルは柱がむき出しのまま。長年、風雨にさらされてきたので、いたるところにサビが浮いている。

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©高口康太

 高銀金融117は商業施設とオフィスが入居する予定で、その回りにはオシャレな高層マンションと高級住宅を集めた住宅街が作られている。こちらはほぼほぼ完成しているようだが、ほとんど住んでいる人はいないようだ。

 電動自転車で周囲を走り回ったが、誰ともすれ違うこともなく快適なドライブを堪能できた。全住民が神隠しにあった街と言われてもついつい信じてしまいそうな異様な光景だ。

天津市にある「世界一高い未完成建築」と周辺の無人マンション街 ©高口康太

 中国ではこの10年、こうしたニュータウン建設が盛んだったが、その多くが交通の便が悪い陸の孤島状態だ。中国で飛行機に乗っていると、畑や沼のド真ん中にビルがにょきにょき生えている景色をよく見かける。高銀金融117も市中心部から車で30分程度とさほど僻地にあるわけではないが、地下鉄はなくバスの本数も少ない。電動自転車で通勤するにはちょっと距離があるので、やはり陸の孤島状態と言っていいのだろう。あと10年ぐらい待つと地下鉄が開通するらしいが、それまでこの状態なのだろうか。

10兆円を費やした廃墟の都が爆誕!

 高銀金融117は一説によると、500億元(約1兆円)を費やしたあげくに廃墟化したという。すさまじい金額だが、実はそれをはるかに上回る5000億元(約10兆円)を費やした廃墟が今、爆誕している。

 それが、習近平総書記が作る新たな都、雄安新区だ。

 北京市から南西に100キロほど離れた農村を、エコでハイテクな大都市に作り替え、北京市の経済・研究機関の一部を移転させようという国家プロジェクトである。雄安新区建設計画は2017年に発表されたが、その時は世界でも大きく報じられ、日本からも多くの視察団が訪問している。

 中心部はEV(電気自動車)しか入れないエコ・シティだ。無人バスや無人宅配車、無人清掃車が走り回り、無人スーパーまであるイノベーション・シティだ、などと驚きの声が伝えられていたが、その後すっかり報道は消えた。外国人どころか中国人すら興味を失ったらしく、雄安新区観光ツアーも今はない。この習近平肝いりの都がどうなっているのか、見てみたくなった。

雄安新区市民サービスセンターの記念メダル自販機。観光客が消えたため、電源が落とされていた ©高口康太