そこで目にしたのは、高銀金融117周辺の無人住宅街を数十倍にレベルアップしたような、超巨大ゴーストタウンだった。雄安新区はかっちりと町作りの計画が作られており、居住区から徒歩15分以内に学校や病院、スポーツ施設、徒歩5分以内に幼稚園やコンビニがあるといった具合に、どこにマンションを建ててどこにお店があってどこに公共施設があるか、すべて先に決められている。その計画通りに建設が進んでいるわけだが、今のところ住民はほぼゼロ(昔からこの地に住んでいた農民たち用に作られた補償住宅街だけはちょろちょろと人がいる)。それなのに計画通りに街は作られているので、無人の街だけができている。やはり神隠し状態のゴーストタウンだ。
「イノベーション!イノベーション!」習近平はハコモノ作りに邁進中!
しかも、まだまだ工事は始まったばかり。車で周囲を回ると建設が終わっているのは中心部だけで、周囲は建設現場や荒れ地ばかりだった。すでに10兆円を突っ込んだというが、完成までにあとどれだけ投入すればいいのか、見当もつかない。
また、自慢のハイテク・イノベーションもほとんど姿を消していた。無人スーパーは撤退。無人バスの停留所は撤去。無人宅配車、無人清掃車は稼働を停止しているという。
建設途中の街を廃墟というのは間違っているかもしれないが、無人の街並みや広大な荒れ地は廃墟感でいっぱいだ。
この雄安新区は「中国第三の国家級新区」と位置づけられている。深圳自由貿易特区を作った鄧小平、上海・浦東経済新区を作った江沢民と並び、習近平総書記の政治業績を示すレガシーにしたいのだろう。ただ、鄧小平、江沢民は中国経済が青年時代、ともかく箱物をがんがん作って成長していく時代のリーダーだった。経済が成熟した今は別のスタイルの経済発展が求められるはずだ。なので、習近平総書記も「イノベーション!イノベーション!」と連呼しているのだが、結局は巨大箱物作りに邁進しているのはいかがなものか。
足元の不景気は中国お得意のスピード対応で乗り越えられるかもしれない。だが、不動産頼みからの脱却という中長期の課題はクリアできるのだろうか。楽しく廃墟見物をしながらも、この疑問が頭から離れることはなかった。
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