最近、中国取材が面白い。といっても、厳重なゼロコロナ政策が敷かれる中国には、そう簡単には渡航できない。いま私が面白がっているのは、日本国内で、中国から移住してきたばかりの中国人に会うことだ。

 というのも近年、これまで中国社会の中枢にいたはずのエリート層が、習近平体制に見切りをつけて続々と母国を離れる現象が加速しているのだ。

 中国を脱出する行為は「潤」(rùn)と呼ばれ、いまや上流層を中心にちょっとしたブームになっている。ちなみに「潤」という漢字に意味はなく、拼音(中国語の発音を表すアルファベット表記)の「rùn」が英語の「run」に通じることから作られた俗語だ。

ADVERTISEMENT

防護服姿の当局側人員は中国語では「大白」と通称される。写真は2021年1月、コロナ陽性者が確認された上海市内の一部地域で警戒に当たる大白たち。©iStock.com

毎月数十世帯の中国上流層が日本に移住か?

 ここ数年来に日本に移住した中国人について、私が直接・間接に見聞した事例を紹介しよう。具体的な事情を書けない人も多いので「日本社会でいえばどのくらいのランクか」でおおまかに表現しておくが、たとえば

・NHK元編集委員(→前回記事の王志安)

・週刊文春元編集長

・朝日新聞の大物記者

・早稲田大学元准教授

・億単位の高額納税者

・野村證券の元部長

 このくらいの地位の人たちが国を離れて逃げてきたのを確認している。

 関西地方の複数の華人系不動産業者に聞いたところ、ここ半年でこうした「潤」系の中国人による住居購入が、1社あたり毎月4~5件成約し続けているという。全国規模で見た場合、おそらく毎月数十世帯の上流層の中国人たちが、日本に居を移していると考えられる。

「潤」の中心となっているのは修士号・博士号持ちや留学帰りといった高学歴者で、年齢層は40~50代が最多。家庭の資産についても、最低でも数億円は持っている人たち(もちろんもっと大金持ちはたくさんいる)だという。名実ともに中国国家のエリート層だ。