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「中国社会の非合理性に、つくづく愛想が尽きたんです」

「潤」は今年4月から急増した。理由について、最近関西地方に移住した50代の中国人女性は「上海のロックダウンでこりごりになった人が多い」と話す。彼女は天安門世代の上海人で、若い頃の原体験として「ダメな中国」を知っていることもあり、もともと体制への不信感は強かったようだ。

「中国社会の非合理性に、つくづく愛想が尽きたんです。あそこまで厳格な封鎖は本当に必要だったのか。数日に一回のPCR検査で逆に『密』になって感染リスクが高まったり、陽性者が送り込まれる集団隔離所が非衛生的でプライバシーもなく、かえって心身を壊しそうな環境だったり。まともじゃありません」

2022年4月15日、ロックダウン下の上海で「大白」からPCR検査会場に誘導される地元の夫婦。©iStock.com

 彼女がやりきれないと感じたのは、こうした施策の根拠を納得のいく形で説明されたり、問題点が後日に客観的に検証されたり、人的・経済的な被害の真相が伝えられたりすることが、現代の中国の体制下ではまるで望めないことだった。

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 当時、上海では「この過剰な統制は、やがて台湾に侵攻する際に国際社会から受ける制裁と、それによる物資欠乏に備えたシミュレーションだ」「上海市民は捨て石にされた」といった噂も乱れ飛んだという。極限状態にありがちなデマだが、市民の強い不信感を読み取れる話ではある。彼女は続ける。

「もともと、習近平政権が2期目に入った5年前から雲行きのあやしさを感じて、日本に少しずつ財産を流していたんです。いつでも拠点を移せるようにはしていましたが、今回の一件が、出国を決める最後のひと押しになりました」

 一般市民はそれでも党や習近平に信頼感を持っている人が多い。ただ、富裕層や知識層を中心に、上海のみならず北京や深圳など他の大都市からも脱出の動きが加速した。単なるロックダウン避けが目的ではなく、その根底にあるのは、あんな政策に平気でゴーを出せる硬直した体制に対する懸念だった。

2022年4月10日、ロックダウン下の上海でPCR検査を受けている女性。
©iStock.com

「国家自身の自浄作用を期待しにくい。これがなにより怖い」

「習政権の3期目突入で、体制の硬直化は加速すると思う。不動産バブルの崩壊も経済成長の鈍化も深刻ですが、問題を柔軟に解決できるような、国家自身の自浄作用を期待しにくい。これがなにより怖い」