オカモト氏が耳を疑った言葉
やっと歌い終わると、怖い人として知られているサンチェさんが言ってくれた。
「ああ、いいね。おまえさ、ジャニーズの曲は歌えないの?」
「あんま、わかんないですね……」
「ジャニーズに来てんのに、ジャニーズが歌えないの? 面白いな、おまえ」
すると、ジャニーさんは、思わず耳を疑う言葉を口にしたのだ。
「いいよ、ユーは。とりあえずMC出る?」
意味がわからない。
「出るって何ですか」
って聞き返すと、
「いや、ライブで、歌える?」
中三の僕はもちろんそれまでステージで歌った経験など、一度もない。それどころか、カラオケさえ行ったことがなかったほどだ。だけど、海外アーティストのドキュメンタリーをたくさん見ている僕の気分は、すでにジャスティン・ビーバーだった。
俺のストーリーはもう始まっている!
だから、こう即答した。
「はい、いけます!」
「お客さん、5000人ぐらいいるけど、ユー、いける?」
「いけます!」
「とりあえずSexy Zoneを紹介するよ」
メンバーたちの反応は
軽く打ち合わせをしなくちゃということで、午後6時から始まる3回目の公演の本番前に、いきなりメンバーに紹介された。彼らからすれば、ようやく実現した初のワンマンライブなのに、見ず知らずの僕がステージに出るといきなり言われたのだ。「何?」「誰なの?」と戸惑うのは当然だ。
「あ、どうも……」
みたいなよそよそしい雰囲気だったが、ジャニーさんは気にする様子もない。
「ケント(中島健人)とフウマ(菊池風磨)さ、カウアンがジャスティン・ビーバーを歌うんだけど、とりあえず紹介できる?」
「あ、はい」
「じゃあ、友達だってことにしよっか」
とサンチェさんが提案し、みんなは「あ、はい」「わかりました」と答えたものの、明らかに不満顔だった。僕も、「すみません……」と言うしかなかった。
そのままライブが始まり、MCの時間になって、
「今日は、友達を連れて来てるんです」
と切り出された。