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「あ。僕だよ。ジャニーだよ」といきなり電話が…カウアン・オカモトが明かす“異例の初対面”《ジャニーズ性加害》

『ユー。ジャニーズの性加害を告発して』#1

source : ノンフィクション出版

genre : エンタメ, 芸能, 社会, 読書

note

ライブ会場に広がるざわめき

 お客さんは「大物ゲストが来ている」「ジャニーズの先輩タレントに違いない」と思うのが普通だろう。そこへ鳴り響いたのは、

「岡本カウアン!」

 という呼び込みの声。

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「え? 誰?」

 とザワつく会場。

「このジャスティン・ビーバーみたいな子が、ジャスティン・ビーバーを歌うんです。初舞台なので、みんなも聴いてください!」

 と紹介され、僕は『Baby』を歌った。しかもアカペラで。

 フルコーラス歌ったのか、間違えずに歌えたのか。

 緊張しすぎて、拍手されたこと以外、ほとんど記憶がない。

 傑作だったのは、舞台から下がったとき、Sexy Zoneのバックについている100人くらいのジュニアに拍手でお出迎えされたこと。みんなたぶん、「誰なんだろ、こいつ」と思っていたはずで、「もしかして、ジャスティン・ビーバーの親戚?」とファンの中で噂になっていたらしい。

「ユー、とりあえず、ご飯行こうか」

 僕の出番が終わって舞台裏に戻ると、ジャニーさんが待っていて、

「ユー、とりあえず、ご飯行こうか」

 といきなり誘われた。

 “え。ライブ、最後まで見ないの?”

 と思ったけど、

「もういいから、ご飯に行こう」

 とジャニーさんが言うので否も応もない。

 ジャニーさんが運転する白いベンツに乗せられて向かった先は、青山のイタリアンレストラン。あとで知るのだが、そのイタリアンはジャニーさんが住むマンションの近くにあって、ほかのジュニアたちもよく食べに来る店だった。

©文藝春秋

 当時すでに80歳を超えていたジャニーさんの運転はとてつもなく荒かった。

 急発進、急ブレーキを繰り返すので、めちゃめちゃ怖いのだ。Uターンの際に縁石に乗り上げることもあった。さすがに危ないと周囲も止めたのだろう。僕が入所して1年くらい経ったときには自分で運転することはなくなっていた。僕が辞める2016年頃には、車椅子も使うようになっていた。

 その日は、ほかのジュニアたちとレストランで合流し、食べ終わるとそのままみんなでジャニーさんの家へ行った。