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終戦、78年目の夏

『戦場まんがシリーズ』に松本零士が込めた“無常と哀しみ”「戦争で死んだ若者が、あと30年生きていたら…」

My First BIG/ザ・コクピット新刊発売特別企画 #1

2023/08/14

genre : エンタメ, 読書

note

 松本零士のライフワーク「戦場まんがシリーズ」は、第二次世界大戦をベースにした短編マンガ群である。本作『音速雷撃隊』は「週刊少年サンデー」1974年15号(4月7日発行)に掲載された32ページの読み切り短編だ。

 

 終戦から29年が経過して社会から戦争の記憶が薄まるなか、同年3月にフィリピン・ルバング島で小野田寛郎元少尉が発見され、日本に帰国したばかり。あらためて戦争について考える機運が高まっていた時期であった。

 本作の主人公の野中少尉は、有人戦闘ロケット「桜花」に搭乗して出撃するも、アクシデントで一命を取り留め、のち再出撃することになる。死にゆく者と、それを送り出す者が、互いに気遣いをしている姿には戦場の悲哀が漂い、その一方で誰もが特攻(自爆攻撃)を受け入れている狂気を同時に提示する。

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 また、敵役となる米軍の視点に立った描写もあるおかげで、戦場に駆り出された者は皆等しく被害者であると気づかされるだろう。

 野中少尉を送り出す山岡中尉の「この戦争で死んだ世界じゅうの若いのが あと三十年生きていたら……みんな、いろんなことをやったろうになあ……」とのセリフには、戦争の無常感やペーソスが漂い、とりわけ印象的に響く。

 なお、本作の掲載号は「少年サンデー」の「創刊16周年特別記念号」。折しも第一次オイルショックの影響を受け、前年の15号に比べると72ページも減少し(310→238)、漫画掲載本数も13本から10本に減っていた。そのような状況でも、巻頭に本作のようなテーマ性の強い作品に貴重な掲載枠を使い、当時の少年たちに反戦のメッセージを発した「少年サンデー」編集部の英断も讃えたい。

INFORMATION

My First BIG/ザ・コクピット 日本編 4
ザ・コクピット 日本編 曳光弾回廊
松本 零士著
 

『戦場まんがシリーズ』に松本零士が込めた“無常と哀しみ”「戦争で死んだ若者が、あと30年生きていたら…」

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