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日本新、影の立役者は村山紘太だった?

マニア ところが、東京マラソン前の記者会見で、設楽は目標タイムを当初掲げてた2時間6分台から9分台にトーンダウンしましたよね。今の設楽なら6分台は出せるはずなのに、とちょっと不思議だったんです。でもよく考えると、足に違和感があってもこのタイムは出せるという数字だったんだなと納得です。設楽の言う2時間9分台は絶不調でも出せるタイム、という意味だったんですよ。

ポール 実際、疲労骨折の治りかけだったそうですからね。それであの走りは驚異的です。

話が尽きないEKIDEN Newsの3人。右からポールさん、西本さん、マニアさん

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西本 さてレース当日の話をしましょうか。まだ誰も指摘してないのですが、あの日本新には影のMVPがいます。それが村山紘太です。実はあの日、世界記録を期待されていたキプサングがレース前から調子悪かったらしいんです。で、キプサングを引っ張るはずだったペースメーカーが、どうしたらいいかわからなくなった。

マニア 先頭集団はもう意思のない暴走列車みたいになってましたよね(笑)。ペースのアップダウンが激しくて、めちゃくちゃ。

西本 東京とベルリンでキプサングと走ったことのある設楽は途中でちょっとおかしいなって気づいたんでしょうね。オートマティックに30kmまで走るはずが、ペースメーカーがあてにならないと判断して、一度意図的に下がってるんですよ。ランナーが自分の力でペースを維持しようとすると体力を消耗しますから。そんな危機的状況となったときに、やってきたのがペースメーカーの村山です!

「悠太さんをぼくがひきます」と宣言した村山

マニア 本来、彼のペースメーカーとしての契約は15kmまでだったんですよね。

西本 それなのに村山は20kmまで設楽を引っ張った。この男気たるや! 見事に流れを作って、20kmで設楽を先頭集団に戻すという大役を果たしたんです。兄の村山謙太はツイッターで「紘太が、15キロまでなのにギリギリまで行ってるのかな??(^◇^;)」ってちょっと驚いてました(笑)。

ポール 実は僕、大会直後に紘太くんに会って、少し話したんですけどまさしく同じことを言っていました。「契約は15kmまでだったけど、ペースが乱れているのを見て、僕しかいないと思って、20kmまで自分で持っていきました」って。

西本 13kmあたりで、バイクで並走している早野レースディレクターに「悠太さんをぼくがひきます」と宣言したそうなんですよ。裏で平昌オリンピックもやってたし、キプサングも不調。実は今回の東京マラソン、やばかったんですよ。でも盛り上げるために、日本長距離界全体がアシストした。みんなが設楽のために! オールフォーワンです!

ポール 実際、あのまま行ってたら、下手すると12kmぐらいでレース終わってましたよね。

マニア そんななかでペースメーカーについていくかどうかの判断は本人がしなきゃいけない。そのとき井上大仁(MHPS)はトップ集団についていくという判断をして、それが最後の体力を奪ってしまった(結果、全体5位、日本人2位)。

東京マラソンの28キロ付近、先頭集団で力走する設楽悠太(右端) ©時事通信社