1ページ目から読む
5/5ページ目

大きなポイントとなった36km地点

西本 僕らは36km地点あたりで応援をしていたのですが、そのあたりから設楽が井上をおいあげていくんですね。東京マラソンの35~36kmは大きな攻略ポイントでして、35kmすぎに品川で折り返しポイントがある。ここでスピードがいったん落ちて、またトップスピードまで上げなくてはならない。つまり東京マラソンは「36kmからGO!」というコース。設楽は36km地点で「悠太コール」を予定している我々のツイートをリツイートしていたくらいだから、ここまで想定済みで走っているはず。


東京マラソン 36km地点 2018年2月25日 / 設楽悠太 2時間6分11秒 日本新記録(0:42からEKIDEN Newsによる“悠太コール”が)
https://www.youtube.com/watch?v=yEqXS6483gE

ポール ペースメーカー頼みでオートマティックに行っちゃいけないときもあるんですよね。それに気づいて一時、設楽が自分のリズムを取り戻そうとペースメーカーの前に出たときがあるんですが、井上はそのとき前のペースメーカーの背中だけを見て走っているんですよ。安定しないペースメーカーによる数秒の上げ下げが、ラスト5kmにそれが出てしまったんです。

ADVERTISEMENT

西本 ほんわかした印象がある設楽選手ですが、自分のリズムでいかに走るきるか、そのためにどんな準備ができるか、ギリギリまでやってきた跡がこの1年を振り返ると見えてくるんですね。

日本記録更新の瞬間 ©getty

* * *

ベルリンで2時間5分台もある!

西本 ちなみに、もうひとつEKIDEN News的に忘れちゃいけないことがあります。設楽選手がゴールのときに右腕につけていたものです。

ポール あ! それ忘れてましたね。家に帰ったら嫁に「設楽くんも音楽聞くの? iPhoneケースを腕につけてたけど」って言われましたが(笑)、あれはイラストが描いてある給水ボトルのホルダーです。

西本 僕らのツイッター友達のなかに北条さんという女性がいるんですけど、その人が選手のイラストを描いてまして。僕らが最初に食いついたのは、国士舘大学の藤本拓(現トヨタ自動車)のイラスト。こんなイラストを描く人がいるんだ!って言って、マニアさんと画像を保存したりして(笑)北条さんはシブイ長距離選手をずっと描いている、ツイッター界の「長距離オタクイラストレーター」って感じの人です。

マニア その人が設楽啓太、悠太を結構前に描いていて。

西本 ひと握りの駅伝ファンしか知らなかった北条さんのイラストが、日本記録更新でまさかの全国区デビュー! 今後、日本記録の映像が出るたびに、北条さんのイラストもずっとテレビに出続けるという。色々な意味で、感慨深いレースでした。

ポール ところで、西本さん! 今検索していたら、この後、設楽はアジア大会を辞退して、9月のベルリンマラソンに出るようです!!

西本・マニア 9月のベルリン!!!

西本 ペースメーカー、コース環境、ムード。すべてが一番いい、高速レースが期待される大会です。気温も最高だし、ベルリンは昨年も走っててコースも分かってるし……コンディションが整ったら、2時間5分台突入もあるんじゃないですか?

マニア・ポール 5分台ですね!

西本 でもそのぐらいのタイムを出さないと2020年に世界とは戦えませんから。多分設楽は「みんなタイムのことを言うけど、世界陸上で1kmあけられた俺からしたら、世界との距離を詰めるほうが大事でしょう」って思ってるはず! もし本人に会う機会があれば、ぜひ聞いてみたいですね。

東洋大時代の設楽ブラザーズ。悠太(左)と兄の啓太 ©文藝春秋

構成/モオ