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核開発は外交カードではない

 ではなぜ、北朝鮮は世界中から非難を浴びてまで核開発を続けるのでしょう。その理由さえわかれば、北朝鮮非核化への道を開くことができるかもしれません。

 その発想のもと、90年代から最近まで、多くの朝鮮半島専門家が分析を試みてきました。この多くの場面で主流の論調で語られていたのが、核開発は外交関連のカードとして用いるためだ、というものです。核開発を継続する限り、北朝鮮は日米や韓国、諸外国と非核化についての交渉を続けることができます。

 そこで経済や食糧、重油などの支援や、日米との国交正常化などを勝ち取ることを主目的に考えていると、彼らは分析しました。相手をその交渉テーブルにつかせるためにたどりついたのが核開発だったというのが彼らの仮説です。

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 その一方で、我々安全保障の専門家やごく一部の北朝鮮専門家は、外交カードという分析に否定的でした。北朝鮮にとっての核開発は、アメリカに対抗する手段、アメリカに対する軍事的抑止力の確保が目的であるから、決して核開発を放棄することはないと考えたのです。

 1990年代ならまだしも、2005年に非核化に合意して、その翌年に核実験を行っているわけですから、その時点で核放棄の意思はないと判断できたでしょう。しかもその後、再び非核化合意に向けた六者会合が開催されている中で、北朝鮮は2回目の核実験を行っています。ここまでくれば、もう非核化の意思はないと考えるのが正解でしょう。

 とはいえ、かつて北朝鮮が非核化に合意したというのは重要な事実なので、日本とアメリカと韓国は、2005年9月の非核化合意はまだ有効であるという立場をとっており、北朝鮮が約束を破り続けていると主張しています。しかし、もはや北朝鮮はそんな合意や日米の抗議は眼中にない状態です。

 ここまで明確に北朝鮮が核開発継続の姿勢を維持しているとなると、これを外交カードとしてキープしていると解釈するのは難しいでしょう。米韓への抑止力としての核兵器保有が真の目的。そう理解せざるを得ません。