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 学校は、9月21日に「いじめ問題対策委員会」を設置したが、「学校としての重大事案が発生」とはしていたが、いじめ重大事態(いじめの結果、自殺未遂があった)との認識はなかった。1週間の調査で出された報告書(9月29日)では、「いじめに関する内容は特定できず」とした。つまり、学校は、いじめの有無を曖昧にし続けた。

 この頃から、辰乃輔さんは自殺未遂を繰り返すようになる。10月25日に自殺未遂に及んだときは、学校の記録は「今回の自殺未遂の原因が学校側にあるのではないかとの発言もあるが、学校で調べたところ、いじめを想定するような事実もなく、9月19日以降登校もしていないので、学校側で原因になるようなことはないと伝える」などと、いじめの事実や因果関係を否定していた。

 2年生になった1学期の2017年4月10日に、辰乃輔さんはマンション3階から飛び降りた。それでも学校の反応は鈍く、2学期になると市の教育委員会が調査委員会の設置に向けて動き出し、11月2日から調査委が開催された。

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辰乃輔さんが飛び降りたと思われるマンション(筆者撮影)

 ただ調査委の設置について、辰乃輔さんと母親は報道機関の取材で初めて知ったという。市教委は調査委を「秘密会」とし、本人には伝えていなかったのだ。さらにこの時点でも、「いじめ重大事態」という認定すらされていなかった。そんな中で辰乃輔さんが自殺した。そのため、母親は調査委の解散を要望。その後、新しい調査委員会(新調査委)が設置された。

「辰乃輔が生きているときに二次被害を認めてくれていれば…」

自殺する直前まで辰之輔さんが書き続けていたノート 筆者撮影

 辰乃輔さんの死から約4年後に発表された新調査委員会の報告書では、主な4つのいじめ以外にも、学校のいじめ対応の不備、謝罪の会などを二次被害と認めている。いじめ解決の希望が叶わなかったこともあり、長期間にわたり、精神的苦痛を伴うことにもなった。

「最初の調査委は秘密会でしたし、きちんと機能していませんでした。そのため、話し合いの場での音声データも渡せていませんでした。もしデータを出せたとしても、前の調査委の委員は聞かなかったかもしれません。新しい調査委では、音声データをきちんと吟味してくれました。その委員たちのおかげです。ただ辰乃輔が生きているときに二次被害を認めてくれていれば、もう少し頑張れたのではないかと思ってしまいます……」(母親)

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 【厚生労働省のサイトで紹介している主な悩み相談窓口】

 ▼いのちの電話 0570-783-556(午前10時~午後10時)、0120-783-556(午後4時~同9時、毎月10日は午前8時~翌日午前8時)

 ▼こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556(対応の曜日・時間は都道府県により異なる)

 ▼よりそいホットライン 0120-279-338(24時間対応) 岩手、宮城、福島各県からは0120-279-226(24時間対応)