「チームをつぶす気か」「いじめられる方が悪い」
それでも少年野球チーム関係の複数の保護者はいじめを学校に訴えた辰乃輔さん家族を悪者扱いし、家を訪れて母親に対して「チームをつぶす気か。中学校に行って、いじめられなくなると思うなよ」「いじめられるほうが悪い」「B家を責めるな」などの発言をしている。辰乃輔さんは自宅でその様子を聞いていた。
辰乃輔さんは後にノートでこう書いている。
<心に思った事 ぼくは、バカだから、Bにいじめられている事に気づくのがおそくて、気づいたら、頭の中がぐちゃぐちゃでどうしていいか、死のうとしたけど、母さんに見つかっていなくなれなかった。…(略)…△△△(少年野球チームの名前)の人たちが家に来たりして、いじめられるほうがわるいと何回も言われて、こんなに言われるなら、死んだほうがいい。…(略)…どうやって死んだらいいか、考えます>(16年1月5日)
報告書によると、少年野球チームの関係者は全員、聞き取りを拒否している。
「ぼくは、いなくなります」
さらに中学校に入ってもいじめは続いた。野球ではなくサッカーの部活を選んだ辰乃輔さんだったが、2016年の5月ころから、サッカー部の部員とのトラブルを担任に訴えることが多くなった。
「サッカー部員との話し合いもありました。主犯格の生徒はいじめの事実を認め、『自分がいじめられないように(辰乃輔さんを)いじめた』と話して謝罪しました。そのため、一部の部員との間ではわだかまりはなかったのですが……」(母親)
しかし、サッカー部の顧問は事実確認も指導もしなかったという。先生に言ってもなかなか伝わらない。2学期が始まった日に、その苛立ちをノートに書いている。
<9/1 ぼくはサッカー部の友だちからいじめられている。先生に話をするとすぐにあいてに言うってまた見えないところでいじめられる。だから先生に話にいったりすることが怖い>
それから半月後の9月18日に体育祭があり、辰乃輔さんはその翌日に自殺未遂に及んでいる。19日の午前9時50分ごろに自室のドアノブで首を吊り、母親に発見されて市内の病院に救急搬送された。ノートには遺書が記されていた。
<9/18 今日、がんばって体育さいに行った。やっぱり何もかわらなかった。ぼくは、1人だった。サッカー部のぼくをいじめた人、クラスでぼくをじゃまにおもった人、ぼくは、いなくなります>