戦いの果てに
そして広綱の死から14年後――天正18年(1590)、豊臣秀吉の「小田原征伐」によって、戦国大名としての北条氏は滅ぼされ、長きにわたる関東の争乱にようやく終止符が打たれた。
抗うことを諦め、北条氏に臣従した関東の領主たちは、小田原征伐後、ことごとく改易に処された。一方、あくまでも坂東武者の意地を捨てず、抗戦を続けた宇都宮、佐竹、結城らは、いずれも所領安堵を勝ち取った。
とはいえ、いかに意地や誇りを掲げたところで、「東方之衆」や宇都宮家中の結束がなくば、10年以上も戦線を維持することは不可能であったろう。
領主連合の結成に携わり、その後も宇都宮家の舵取りを担い続けた、南呂院という優れた家長がいなければ、同家は広綱死後、数年と持たず滅んでいたかもしれない。
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8月25日に作家・簑輪諒さんの小説『化かしもの 戦国謀将奇譚』(文藝春秋)が発売されます。
上杉謙信の脅威にさらされている越中神保家を助けると約束した武田信玄だったが、援軍は出さぬという。果たして援軍なしに上杉を退ける秘策とは? 腹の探り合いが手に汗握る「川中島を、もう一度」。
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長宗我部家は、大量の砂糖の献上を織田家に約束していた。外交僧として必死の思いで砂糖をかき集めた蜷川道標だったが、何者かに砂糖の献上の先を越されてしまう。横槍を入れてきたのはまさかの……すべてが戦略物資になる乱世の厳しさが身に染みる「戦国砂糖合戦」etc.
気鋭の歴史小説家が放つ、戦国どんでん返し七連発。
文藝春秋