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日本の不動産を買い漁る“外資マネーの宴”の先に待つもの

2023/08/29
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あらゆる不動産の賃料値上げへ

 間違いなく賃料が上がることになる。彼らは冷徹な投資家だ。投資を行えば、まず投資額が確定する。利回り計算でいえば分母の部分だ。そのうえで利回りをより高くするには分子に該当する賃料収入を今よりも上げればよい。よい資産であればあるほど立地がよく、テナントの入居率も高いはずだ。つまり彼らがこれからやってくることは、テナントの賃料を大幅に値上げしてくることに帰結する。

 これはオフィスにとどまらず、賃貸レジデンス、ホテル、商業施設、物流施設のすべてに対象が及んでくるだろう。

 日本にとって大切な社会インフラともいえるコアな不動産が買い占められ、投資利回りを上げることを目的に容赦ない賃料引き上げが行われる。その結果今よりも利回りが上がれば、その先でさらに高値で売り抜けることが可能になる、彼らのシナリオはおおむねこんな感じなのである。

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外国資本に翻弄される日本

 税金が上がる、社会保障費が上がるといって巷では騒いでいるが、その裏側で不動産の賃料値上がりはこれからが本番になる。賃料が上がるとはどういうことか。賃貸マンションに居住する人は家賃が上がる。オフィス賃料が上がると企業は固定費が増える結果、人件費を抑えようとする。製品の値上げに走る。物流コストが上がればモノの値段は上がる、ホテルの宿泊料も高くなる、商業テナントの賃料が上がれば、バーゲンをやる余裕もなくなる。小憎らしいことにこれを演出しているのは日本なんかには住んでいない外資系法人や不動産投資会社の連中なのである。

 現在、日本は外国資本、外国人に翻弄され、大事な優良資産まで抑え込まれ、企業は買収され、外国企業に賃料を払い続けるようになっている。日本の不動産はグローバルな視点からみてあまりにフリーマーケットである。国力が衰えるということが、どんな事態を生じさせるかについてまだ多くの国民が気づいていない。

 いつまでも先進国気取りで、胸を張っている余裕などないはずだ。緊急事態は海の向こう側ばかりではなく、足元はすでに崩れかかっているのである。

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牧野 知弘

文藝春秋

2023年2月17日 発売

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