「6代目(山口組)が8年前に分裂した際には、とたんに対立抗争となり事件が続発するのではないかと緊張感が高まった。組織に公然と反旗を翻して出て行ったのだから、神戸山口組にもそうした覚悟はあったのだろう。実際に、突発的な事件も含めて一時期は抗争が止まらない時期もあった。しかし、ある段階から6代目側が引き起こす事件ばかりとなった」
ヤクザのケンカは“やられたらやり返す”が基本だが…
分裂当初は神戸山口組に勢いがあったが、捜査幹部が指摘するように、その後6代目山口組側が攻勢を強めた。分裂劇を初期からウオッチし続けてきた、首都圏に活動拠点を置く指定暴力団の幹部は、神戸山口組が近年押され気味な状況を踏まえつつこう明かす。
「ヤクザのケンカはやられたら、即座にやり返さなければならない。抗争となれば、一歩も引かないという姿勢をみせなければならないもの。抗争の相手となった側がやられたままで返し(報復)がほとんどないとなれば、ヤクザの社会の中でも『どうなっているのか』と疑問視されるし、カタギ(一般市民)にも示しがつかない。抗争の動きについて関心を持っているカタギも多い。やられたら、やり返す。力を示さなければならないはずだ。力を示さなければシノギ(資金獲得活動)の話も来なくなる。
6代目(山口組組長)の盃を突っ返すまでして組織を割って出たのに、最近の神戸山口組の動向を見るとすでに勝敗は決したようなものだ。井上は神戸(山口組)を作って、何をしたかったのだろうか」
と先ほどの捜査関係者と同じ疑問を呈するのだった。
大勢は決したかにみえる「9年目の分裂抗争」。だが、白昼に人々が行き交う街中で発砲などの危険な対立抗争事件が起きないとの保証はない。警察は情勢の注視を続けている。