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地震本部は確率を日本地図に落とし込んだ「全国地震動予測地図」を発表している。これをみると、南海トラフ沿いは他の地域と比べても赤(危険を示す色)が濃い。だが、実際に地震が起きたのは、東日本大震災、熊本地震、北海道地震……。いずれも危険性がさほど高くない場所ばかりだ。
「次の地震」が南海トラフ地震だと誤解されることで、確率の低い地域で油断が生まれている。男子高校生だけではない。熊本地震でも多くの被災者が「不意打ち地震」と嘆いた。だが、世界で起きるM6以上の地震の2割が日本で発生する。そんな環境の中、今の地震学のレベルで予測地図を作るのは「百害あって一利なし」と言える。
「政治的要素が入った科学はもはや科学ではない」
南海トラフ地震は大きな被害が想定される。対策が重要なのは変わりない。だが対策ありきで都合のいいモデルを選択しているのなら問題だ。拙著『南海トラフ地震の真実』の中盤で明らかにしたように、財源確保などのために数字を操作しているとも取れる行為は、国民への重大な裏切りと言える。
地震、コロナ禍、原発事故など、科学は問題を解決する上で絶対不可欠な人類の知恵だ。政策と科学が濃密に絡む現代社会、基礎となる情報が科学的に適切でなければ正しい解決策にはたどり着けないだろう。政治的要素が入った科学はもはや科学ではない。現代に生きる私たちは政策の背景にある科学が本当に適切か、注意深く見ていく必要がある。