2018年3月、滋賀県守山市野洲川の河川敷で、両手、両足、頭部を切断された女性の遺体が見つかった。殺人容疑で逮捕・起訴されたのは女性の娘・あかり(仮名・事件当時31歳)。母娘は2人で暮らし、あかりは医学部合格をめざして9浪。犯行後に《モンスターを倒した。これで一安心だ》とツイッターに投稿していた。なぜ事件は起きたのか。司法担当記者だった著者が、あかりとの面会、50通超の往復書簡、公判資料等をもとに、事件に至るまでの母娘の日々、事件当日の様子を克明に描いた。
「事件の記事を目にしたとき、そこに大きくうねるような親子の物語を感じました。また医学部受験、教育虐待など現代的なテーマも多く含まれていた。その場で取材記者であった著者に連絡を試みたんです」(講談社編集部・担当編集者)
終始あかりの視点で綴られる本書に対し、「客観性が足りない」などの批判もあったそう。しかしだからこそ、より広い読者層に届き、読者の共感を呼んでいる面もあるのではないか。
「本書を作っている間、著者も私も、あかりさんの今後の人生のことばかり考えていました。故にあかりさんと一体化してしまったのかもしれません。若い方だけでなく60代、70代の読者からも、『辛いのは自分だけでないとわかり、救われた』など娘の立場の感想を多く頂いています」(同前)