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2017年に都議会で起きたこと

 では、追悼文を送付しなくなった2017年に何が起きたのか? 3月の都議会でのある自民党都議の質問がきっかけだった。『トリック「朝鮮人虐殺」をなかったことにしたい人たち』(加藤直樹 著)という本によるとこの自民党都議は、

《私は、小池知事にぜひ目を通してほしい本があります。ノンフィクション作家の工藤美代子さんの『関東大震災「朝鮮人虐殺」の真実』であります》

 と語ったという。実は『トリック「朝鮮人虐殺」をなかったことにしたい人たち』では、工藤美代子・加藤康男夫妻が著した虐殺否定本を取り上げ、どのように間違っているかを検証し、仕掛けられた“トリック”の数々を明らかにしている。しかしネット上で広まる「虐殺は無かった」論は、工藤美代子氏らの言説を鵜呑みにしたものが多いのだ。

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「さまざまな説がある」と言うが…

 先述した「731部隊」の記事でもそうだったが、公的な人間による「さまざまな説がある」という言葉はあたかも両論併記のように聞こえるが、それは事実から目をそらすことにつながる。しかし先週こんなニュースが。

『関東大震災の朝鮮人虐殺、松野官房長官「事実関係把握する記録見当たらない」』(読売新聞オンライン8月31日)

 松野官房長官は30日の記者会見で、デマによって起きた朝鮮人虐殺について「政府として調査した限り、事実関係を把握することのできる記録が見当たらない」と述べた。新たに事実関係を調査する考えはあるかとの問いには否定的な認識を示した。

 31日の会見では、過去に政府の会議が報告書で朝鮮人虐殺を認定していることについて「(報告書は)有識者が執筆したものであり、政府の見解を示したものではない」と述べた。

 これらは「虐殺はなかった」論を擁護しているとは言わないまでも、野放しに加担してしまわないかという危惧を感じる。むしろ率先しておこなうべきは検証と反省ではないか? 過去の日本人が巨悪で現在の私たちは大丈夫というわけではないからだ。同じ人間だからである。情報不足に不安と興奮、それに偏見と無知が加われば時代は関係ない。

差別意識が生んだ悲劇

 たとえばこの記事を見ていただきたい。