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安倍派は「保守政治とは何か」を打ち出すべき

 稲田氏は、8月31日に発表された安倍派の新体制で、派閥の意思決定を行う常任幹事会のメンバー15人の1人に選ばれた。集団指導体制と言えば聞こえはいいが、15人ものメンバーで内閣改造や自民党総裁選への対応を決めていけるのか。稲田氏も「ここから一体どういうことになるのか想像がつかない」と不安を口にした。

 稲田氏にLGBT関連法を巡る経緯などから「保守派の多い安倍派の中で難しい立場になっていると感じないか」と問うと率直にこう語った。

「感じますよ。すごく感じますけど、ただ誤解されているところもあるし。真意が伝わっていないところもあるし、説明責任を果たせていないところもある。仲間づくりと言うか、理解者を増やすことは、今の私にとても重要なことだと思います」

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文藝春秋ウェビナーに出演した稲田氏(左端)、曽我氏(中央)、青山氏 ©文藝春秋

 そして稲田氏は、安倍派からの離脱については真っ向から否定した。一方、番組に出演した朝日新聞の曽我豪編集委員は、安倍派の現状について「清和会(安倍派)の政権が長く続いた中で、自分を見失っているんじゃないか。世の中が見たいのは清和会の政局より政策で、岸田政権の足りないところをどう主張するのか。まとまった政策が見えないから(派閥が)割れるんじゃないかってなると思う」と指摘した。これに対して稲田氏は、「清和会の保守政治とはなにか」を定義すべきだと強調した。

「派閥の(存在する)意味って政策だし、その政策が何なのか示すべき。中でも『保守とは何か』というのはすごく大事だと思います。今までは安倍総理が『この派閥の保守とはこういうものです』って体現していたけど、これからは清和会の考えている『保守政治とは何か』を示すことが必要ではないでしょうか」

今後も“わきまえない女”であり続けるか

 番組の終盤、「稲田氏にとって政治とは何か」と問うと「共感力と突破力」と語った。自らが正しいと共感した方向に突き進む姿勢は、稲田氏の真骨頂だろう。ただ稲田氏本人が「突破するのは本当にきつい」と吐露したように、その姿勢は時に危うさを孕み、批判を浴びる。「突破力」を発揮するには正しい知識とバランス感覚に加え、理解してくれる仲間も必要だ。「“わきまえない女”でありたい」と主張する稲田氏が、困難を乗り越えて、今後存在感を発揮できるのか。自民党のあり方も問われることになるだろう。

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 稲田元防衛相が出演した「青山和弘の永田町未来café」は、「文藝春秋 電子版」で観ることができます。